この連載は、正社員3人程度(大工などの職人は除く)の最少人数で安定した受注を得ている工務店を取材し、経営手法や人気の秘密を探る。そこには縮小化する市場のなかで最適化を図るためのヒントが隠されているはずだ。
新潟市のユー・ハウス工業はリフォーム主体の工務店。4年前に事業継承し、最近はリノベーションによる中古活用にも力を入れている。取締役の五十嵐直樹さんに現在の活動に至る経緯を聞いた。
建築家のコンセプト論に嵌る
五十嵐さんは1983年生まれ。高校3年生のときに住宅関連のテレビ番組を見ていた母親が「建築士の資格があれば一生食べていける」とつぶやいた。その言葉が耳に残り、建築士の資格を取るための3年制の専門学校に進んだ。
学んでみると建築は五十嵐さんの性格に合っていた。特に建築雑誌に掲載された建築家のコンセプト論に惹かれた。藤村龍二や谷尻誠といった当時の若手建築家に強い影響を受けた。もともと五十嵐さんは問題解決の筋道を考えるのが好きだった。建築の方法論はその志向性に嵌った。
五十嵐さんは専門学校卒業後、社員2名の小さな工務店に就職。社長は不動産業界出身でローコスト寄りの価格帯のデザイン住宅を手掛け、業績は好調だった。仕事に携わってみると、住宅産業の家づくりは建築雑誌の世界とは大きく違っていた。建築家の家づくりは敷地の与条件や建て主の固有性を細かく読み込んで1つのコンセプトに収斂させる。それに対して住宅産業の家づくりは効率優先で・・・
この記事は新建ハウジング9月20日号 4面(2022年9月20日発行)に掲載しています。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。