東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、2020年度「倒産発生率(普通法人)」調査の結果を発表した。2020年度の倒産発生率は前年度比0.046ポイント減の0.204%で、2011年度以降の10年間で最低となった。リーマン・ショックで倒産発生率が0.532%を記録した2008年度以降、中小企業金融円滑化法(2009年)の施行などで倒産発生率は低下を続けたが、2019年度は消費増税や人手不足で11年ぶりに企業倒産が増加していた。2020年度は新型コロナ感染拡大に対する各種資金繰り支援などの効果が広く浸透し、企業倒産が大幅に抑制されたことが明らかとなった。
都道府県別でみると、倒産発生率が上昇したのは6県で、前年度の28都府県から大幅に減少。低下したのは40都道府県(前年度19道府県)で、同水準は兵庫県のみだった。倒産発生率が最も高いのは島根県の0.271%(前年度0.327%)で、6年ぶりに全国ワースト1位を記録した。次いで静岡県0.264%、兵庫県0.251%、大阪府0.246%と続いた。手形割引業者の連鎖倒産などで前年度1位だった青森県は、0.337%から0.175%に改善した。最も低かったのは、前年度に引き続き沖縄県の0.132%(同0.158%)だった。
地区別では、北海道、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州の9地区すべてで前年度を下回った。倒産発生率が0.200%以上となったのは、前年度の8地区から4地区に減少。発生率が最も高かったのは近畿0.231%で、関東0.212%、中部0.210%、北陸0.200%と続く。倒産発生率が最も低かったのは、2年連続で北海道(0.413%)だった。
産業別では、10産業のうち8産業が前年度よりも改善した。倒産発生率が上昇したのは、金融・保険業と不動産業の2産業だった。倒産発生率が最も高いのは卸売業の0.363%で、前年度から0.106ポイント改善したものの6年連続ワーストとなった。
2020年度の企業倒産はコロナ関連の支援策により低水準で推移し、2021年度もさらなる低下が見込まれている。しかし、2022年度は支援効果が薄れ、倒産が4月から5カ月連続で前年同月を上回り増勢に転じている。同社は、融資の返済開始に加え、業績の回復遅れや急激な円安、物価高騰により、今後倒産発生率が上昇する可能性が大きいとしている。
同調査は、国税庁が公表した法人税課税対象の内国普通法人(281万8077社)と、同社が集計した企業倒産のうち普通法人(5764件)を基に算出、まとめたもの。
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