沖縄科学技術大学院大学はこのほど、英国ケンブリッジ大学との共同研究チームが、太陽電池の安価な代替材料のひとつ「ペロブスカイト」の効率を制限してしまう小さな欠陥が、材料の構造変化にも関与しており、経年劣化を引き起こしていることを明らかにしたと発表した。「ペロブスカイト」は、結晶シリコンに比べ材料が豊富に存在し、加工費もはるかに安価。材料をインク状にして、印刷するように簡単に薄膜を作ることが可能なため、経年劣化に関する新たな知見を得たことで、長寿命で実用化レベルのペロブスカイト太陽電池開発を大幅に加速させると期待される。
この研究成果は科学誌Natureに掲載された。ペロブスカイト太陽電池のエネルギー出力は、従来のシリコン太陽電池と同等か、それ以上。ただし、寿命が限られていることが製品化のネックとなっている。
共同研究チームは、高空間分解能技術を用いることで、ナノスケールにおけるペロブスカイト薄膜の特性や、太陽光照射による経時変化の観察に成功。表面に形成されるトラップが膜の光劣化に関連していることも明らかにした。ケンブリッジ大学化学工学・生命工学科のティアナン・ドハティ博士は「表面にトラップが形成される問題を解決できれば、デバイスの性能と長期間にわたる安定性が同時に向上できるという可能性が示唆された」としている。
また、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所のスチュアート・マクファーソン博士は、「シリコン型太陽電池は長期的には安価だが、加工を開始するために多額の初期投資が必要。ペロブスカイト太陽電池は、溶液処理が可能で印刷も容易である上に、使用する材料も非常に少ないため、初期コストがかからない。太陽エネルギーへの移行を目指す国々にとって、ペロブスカイト太陽電池は現実的な選択肢」としている。
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