三重県四日市の設計事務所・アトリエオーブ代表の西本哲也氏は、建築家として活動する傍ら工務店のプランニングのサポートや一般の人からの間取り相談も行っている。経験豊富な同氏にインスタ世代の間取りに関する要望と、それらをプランに落とし込む手法について聞いた。
ポイント① 要望の多くは Instagramの影響
◉注文住宅の建て主の中心は30歳前後の若いインスタ世代。彼らは効率的な家事動線と充実した収納スペースを理想化しており、プラン打ち合わせの際にそれらの実現を強く求める。
◉要望の多くは実体験に基づいたものではない。彼らは年齢的に生活体験が乏しいため、Instagramを始めとしたウェブ上の家事動線や間取りの記事に大きな影響を受けている。
本稿ではインスタ世代の見込み客が口にしがちな要望を抽出。プラン作成に必要な各スペースの面積や配置について整理する。
ポイント② 家事楽は洗濯の省力化を重視
◉間取りに関する最大の要望は家事楽。特に洗濯の省力化の需要が高い。洗濯の手間を減らすには室内干しとなる。特に共働きの家庭は夜間も洗濯するので室内干し一択になる。
➡洗濯物を集めて洗って干し、畳んで仕舞う。これを効率的に行うためのスペースと動線の需要が高い。
◉逆に2階のバルコニーは不要だと考える見込み客が増えた。洗濯物を2階まで運ぶのが面倒だからだ。バルコニーを付ける場合も洗濯物は干さずに布団のみ干すことが多い。
◉洗濯と関係が深いスペースは洗面脱衣室。最近は洗面室と脱衣室を分けたい、洗濯室がほしい、その隣にファミリークローゼット(ファミクロ)を配置したいという要望が多い(下図)。
◉洗面室と脱衣室を分けた上で脱衣室のスペースを広げて洗濯室と兼ねるほか専用の洗濯室を設けることもある(下図)。洗濯室には物干しバーなどの室内干しの設えのほかガス乾燥機も積極的に導入される。
◉干した後は畳んで仕舞うか、干すときに用いたハンガーのままファミクロのバーなどに引っ掛けて仕舞うかどちらかになる。畳んでから仕舞う場合は洗濯室に作業台が必要になる。
➡畳んだ洗濯物を上階に運ぶのは手間なのでファミクロに広さを求める(下図)。下着やタオルは脱衣室の収納に仕舞う場合もある。
ポイント③ 洗面室と脱衣室、洗濯室に必要な広さ
◉洗面室と脱衣室を分けた場合、手洗いには1.5畳必要になる。幅1200mm以上のホテルにあるような洗面台に憧れる見込み客が多い。この大きさだと洗面台に2人並んで立てる
◉脱衣室は洗濯機を置くため1.5畳が必要となる。脱衣室で洗濯室を兼ねる場合、天井に物干しバーなどを付けて洗濯物を干すスペースが求められるため、さらに1.5畳が必要だ
◉ファミクロは収納量をふまえると最低3畳、大半の服を収納するなら4畳半は必要。ただし延床面積30坪程度の家だと4畳半のファミクロは1階に収まらない。2階に設けることになる
◉2階ファミクロは洗濯物を仕舞う際に移動が生じる。一方で洋服が収納しきれない状況は避けたい。最終的に・・・・・
この記事の続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー9月号(2022年8月30日発行)/超ときめき★プラン術』P.40~でご覧ください。
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