国立社会保障・人口問題研究所の「第6回全国家庭動向調査」(2018年)によると、既婚女性は1日あたり4時間23分(平日)を家事に費やしているという。コロナ禍ではむしろ、女性の家事負担が増えたという声さえあり、家事の場である住まいをデザインするうえで、“家事楽”の重要度は増す一方だ。YouTubeでもしばしば間取りや動線の知識を発信しているホームランディック一級建築士事務所の伊岐見恭子さんに、家事楽な家づくりのヒントを伺った。
洗濯も料理も動線はコンパクトに
特別な理由がなければ、キッチンと浴室、洗面室・脱衣室は近いに越したことはないでしょう。1階に洗濯機を置き、2階のバルコニーで干すという方には、浴室、洗面室・脱衣室を2階にすることも検討していただきます。そうすれば、ファミリークローゼットも2階に設置できて、一階はLDKだけで済みますよね。
また、キッチンならパントリーをできるだけ近づけたいですね。キッチンから最も遠いところにパントリーがあると、わざわざものを運ばなくてはいけませんから。時には、パントリー内に小部屋をつくって、玄関からすぐに収納できるショートカット動線も提案しています。
このように、家事動線は「近い」ことが大事なキーワードになります。YouTubeでは「〇歩以内」と表現したりもしますが、具体的には10歩以内ならかなり負担は軽くなると感じます
1階で生活完結する間取りがおすすめ
また、上下の移動は絶対になくすべき。“ワンフロア完結型”と表現していますが、1階なら1階、2階なら2階で家事が完結するのがいいでしょう。
理想的なのは、LDKが1階にあったら、洗面室とファミリークローゼットも1階に設置する。それから、小さくてもいいから畳のスペースもつくる。こうすると、歳を重ねて足腰が悪くなったとしても、畳スペースを寝室がわりにすれば1階だけで生活できます。これが私の一押しの間取り・動線です。
最近はコンパクトな家づくりが主流になりつつありますが、大きい・広い家ほど回遊動線やショートカット動線をつくりやすいですね。小さな住宅は全てが近く感じられますが、住宅の規模が大きくなるほど工夫しがいがあると感じます。
コロナが変えた間取り
コロナ禍の中で起こった間取りの変化は3つ。1つは・・・
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続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー最新号(2022年9月号)/超ときめきプラン術』(2022年8月30日発行)P.7~に掲載しています。
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