G3住宅の超高性能な躯体を生かすには換気空調に関する細やかな設備計画が必要になる。床下エアコンと熱交換換気システムを中核にした換気空調の手法についてオーブルデザイン(新潟県三条市)の浅間英樹さんに聞いた。
床下エアコンは基礎断熱強化と気密性確保が重要
◉人間の健康状態は加齢などで変化する。長く快適に暮らすには温熱環境を可変できる空調設備が必要。温度ムラを解消でき、床表面温度の調整がしやすい床下エアコンはその点で最適
◉床下エアコンを機能させるには、熱が逃げやすい基礎外周部を中心に断熱強化を図る必要がある。基礎内断熱より基礎立ち上がり内外で断熱したほうが圧倒的に熱は逃げにくい
➡蟻害リスクとコストにより仕様を判断する(基礎内断熱より工事費が約40万円増)
◉底盤中央部の熱は鉄筋などを伝わって外周部に移動する割合が多く、中央部下への放熱は少ない。土中に発泡系断熱材を設置した際の長期耐久性に疑念があることもあり、底盤下は断熱しない(寒冷地や土中に水道[みずみち]がある場合を除く)
◉床下全体に暖気を行きわたらせるには静圧を高める必要がある。それには床下空間の気密化が必須。貫通部や間仕切り下部、コンセント周りなどの気密化を徹底する
◉スリットは床下全体に暖気を行きわたらせるように外周部の窓付近を中心に配置。掃き出し窓の前に設置すると窓面の表面温度を補えるほかコールドドラフトも防止できる。また、上がり框下部に隙間を設けると玄関が暖まる
➡スリットの設置箇所が多い場合は幅を細め、開口面積を小さくして静圧を高めるとよい。同社は幅18mmが標準
◉最近はエアコンの製品寿命が短くなってきているのでメンテナンスや交換しやすい設置位置を工夫する
床下エアコンは省エネより快適性重視の仕組み
◉床下エアコンは1階床表面の温度ムラのない環境を実現できる。1階床の表面温度が室温より2~3℃高くなることなどから体感上の快適性も高まる
◉一方で居室以外に床下空間も暖房することから、その分の暖房に用いる消費エネルギーが増える。計画にもよるが、ホームズ君で計算すると通常のエアコン暖房に比べて1〜2割消費エネルギーが増える(建設地が千葉市の場合)
➡ただし、躯体性能が高いこととエアコン自体の運転効率が高いので、光熱費が増えてもそれほど建て主の負担にはならない(平均的な住宅よりははるかに省エネルギーになる)
◉床下エアコンが計画通りに機能している場合、・・・・
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続きは『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー3月号/最新事例に学ぶ高性能住宅【設計施工】セオリー』(2022年2月28日発行)P50~61に掲載しています。定期読者限定で事例の解説動画、図面や写真など豊富な資料集もご覧いただけます。
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