カナダウッドジャパン(東京都港区)は、ツーバイフォー工法と在来軸組工法を使い分けた木造の高齢者福祉施設「中野ぬくもりの郷(さと)」(兵庫県伊丹市)が6月竣工し、7月に開所したと発表した。木造分棟形式の集合体として計画され、養護老人ホーム棟、特別養護老人ホーム3棟、地域交流棟の計5つの建物が連結した構成。各棟の目的に応じて工法を使い分けており、養護老人ホーム棟および特別養護老人ホームはツーバイフォー工法を採用。3階建ての養護老人ホーム棟では、2ユニットを1フロアに配置し、少ない職員数で効率的に多くの入居者のケアが行える構造とした。平屋建ての特別養護老人ホーム棟では、全居室で庭を楽しめるほか、夜間救急時の対応が容易になっている。
中央の地域交流棟では、在来軸組工法を採用。入居者だけでなく地域イベントでも活用するため、木材を現し露出させた温かみと迫力のある大空間となっている。正面の柱は通行の妨げにならないよう断面が小さく、柱頭は鉄骨T断面にして垂木を強調している。外観は切妻屋根とすることで、伊丹市の街並みを継承、調和するデザインに仕上げた。
同施設では木造の採用により、設計および施工の工期・コストの最小限化を実現。特別養護老人ホーム各棟の境界部に異種構造(鉄骨造耐火建築物)を挟むことで、耐火上別棟扱いとし、火災時の建物間の延焼を防ぐとともに耐火規定を緩和している。
建築主である社会福祉法人伊丹市社会福祉事業団の基本理念「安全・安心」「多様性」「拠り所」に対応し、「地域に根ざした家」がコンセプト。設計は松田平田設計(東京都港区)、施工は住友林業(東京都千代田区)が担当した。
カナダ林産業審議会は「大規模木造建築における在来軸組とツーバイフォー両工法のハイブリッド構造は、多彩なデザインの可能性を広げることができるほか、建設費の抑制にも貢献するが、日本ではまだ事例が少ない」とし、同施設を革新的なプロジェクトと評している。
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