全国建設労働組合総連合(全建総連)は8月22日、全国の工務店を対象に6月後半から7月にかけて実施した、木材価格の高止まりや建材の値上げ、給湯器等の納期遅延などの影響に関するアンケート調査の結果を公表した。3月(4月25日公表)に続く2回目の調査。
見積価格や工事費に「大きな影響が出ている」との回答が前回より7.9%増の66.8%に達した。価格転嫁の状況は「一部を自社で負担」が47.4%を占め、見積時の価格では工事できないために工務店が負担せざるを得ない状況があるなど厳しい環境が続いている。
調査は全国の工務店を対象に、6月23日から7月31日に実施。1075社から回答を得た。給湯設備の納期に関しては発注から納品まで平均62.3日かかっており、3月調査(66.7日)より若干の改善に止まった。また最大日数は270日で、3月調査(240日)を上回っている。
工事原価は「かなりあがった」53.2%(3月調査比0.1%減)、「上がった」44.2%(同1.5%増)となり、工事原価上昇に影響している建材は、1位:木材(構造材、合板、羽柄材・造作材)、2位:金属屋根材、3位:サッシ、4位:給湯器、5位:クロス等、6位:トイレ関係、7位:セメント関連、8位:システムキッチン、9位:ユニットバス、10位:外装材――となっている。木材は値上がり率が「50%以上」との回答が40.2%を占めた。
見積価格・工事費について、「大きな影響が出ている」は66.8%(同8.0%増)、「少し影響が出ている」38.8%(同7.8%減)で、20%以上の上昇は、リフォーム工事で37.4%(同4.3%増)、新築で47.1%(同2.9%)と、大幅に価格上昇している。
値上がり分を「お客様に負担してもらった」は42.2%(同1.9%増)の一方、「すべて自社負担」は10.4%(同4.1%減)となり、顧客への価格転嫁に関しては改善の兆しが見える。ただし、「一部自社負担」は47.4%(同2.2%増)と増加している。価格転嫁できなかった理由としては「既に見積書を出していた(既契約含む)」が76.5%と大半を占めた。
受注状況は「減少」46.3%(同3.5%減)、「横ばい」42.8%(同3.0%減)、「増加」10.9%(同6.4%増)と、好転している様子が見て取れるが、今後の受注見通しは、「減少」35.9%、「横ばい」33.0%、「不明」24.2%で、「増加」は6.8%に止まり、厳しい見通しが示された。
資金繰りに関しては、年末まで現状が続くと心配との回答が60.5%(同19.2%増)で、既にコロナ特別融資等の融資を受けている回答者が公庫22.6%(同9.1%増)民間16.6%(同 3.3%増)も増加しており、資金繰りへの負担が一層高まっている。
業界の将来への影響懸念の声も
制度・政策要望では、「国産木材の安定供給・国産木材利用への支援策」が68.1%で最も多く、「事業者の税負担の軽減」が57.6%、「値上がり分に対する国の補助金(消費者向け)」46.6%などを求める声も多かった。
回答した工務店からは「グリーン住宅ポイント・こどもみらい住宅支援事業などの政府による施策は少なからず効果を得ている。引き続き継続期間を延長して欲しい」といった声がある一方、補助金の申請手続きの負担軽減を求める声もあった。また、建材・設備等を国外生産に頼りすぎている状況や半導体不足などの解決策を求める意見や、インボイス導入の延長、アスベスト除去への補助の要望もあった。
また、「このような状態が続くと若い職人も育たなくなり、若い方が会社をつくることもできなくなるのではないか」「行政による助けが今必要。それを具体的かつ迅速に行うことが今いる職人さんやこれからの職人を守る事に繋がると思う」など、業界の将来を考えた対応を求める声も寄せられた。
今回の調査結果を踏まえ、全建総連は、各国政政党に対して、▽新築・リフォームの補助制度の単価引き上げ等、エンドユーザーの負担軽減策▽大工技能者や非住宅木造建築物の技術者の確保・育成、支援拡充▽住宅設備機器の納期遅延の実態把握、関連事業者への納期の改善の指導等適切な対応、国内で十分な量の部素材が確保可能となるよう施策拡充、▽ウッドショックの解消と再発防止、国産材転換支援の施策を拡充――などを要望している。
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