北海道はこのほど、太平洋側の日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震が発生した場合の、太平洋沿岸38市町の被害想定を公表した。三陸・日高沖が震源の「日本海溝モデル」の場合の建物被害は、約13万4000棟が全壊すると推計。十勝・根室沖で発生する「千島海溝モデル」でも積雪荷重がある冬季には約5万1000棟が全壊すると予測した。両モデルとも津波被害が最も多く、千島海溝モデルでは約4万1000~4万2000棟、日本海溝モデルでは約13万棟が津波で全壊するとしている。
今回の北海道の試算は、内閣府が昨年12月に、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震について、道・県単位でマクロ的な被害想定を公表したことを受けてのもの。浸水区域内の時間帯別の人口動態や建物所在地の状況など、個別の地域ごとの実態を踏まえたより詳細な検討を行い、市町村ごとの被害想定をまとめた。
建物被害に関しては、揺れ、液状化、津波、急傾斜地崩壊による全壊棟数を推計。揺れによる被害は建物の構造・造築年代毎の震度と全壊率の関係を求めて、津波による被害は建物の構造別に津波浸水深と全壊率を求め、それぞれ対象建物数を乗じて推計した。冬季は積雪荷重によって全壊率が高くなることを考慮している。
千島海溝モデルでの全壊棟数は、夏季の昼間の場合、揺れによるものが約3000棟、液状化によるものが約3700棟、津波によるものが約4万2000棟、急傾斜地崩壊によるものが約150棟、計約4万9000棟と推計。冬季の夕方・深夜は、揺れが約6200棟に増加。液状化は同数で、津波は約4万1000棟、急傾斜地崩壊は約140棟とし、計約5万1000と推計した。
一方、日本海溝モデルの場合、夏季の昼間、冬季の夕方・深夜とも計約13万4000棟が全壊すると推計した。夏冬とも液状化が約3600棟、津波が約13万棟、急傾斜地崩壊が約20棟で、揺れによるものが、夏季の昼間は約40棟、冬季の夕方・深夜は約120棟とした。
市町村別で津波被害が最も大きい(2つのモデルのうち被害が最大となる場合)のは、函館市の4万6000棟。次いで、釧路市(夏季・昼)2万5000棟(冬季は2万4000棟)、登別市1万4000棟、苫小牧市1万3000棟、北斗市1万1000棟などとなっている。また、建物倒壊による人的被害(死者数)は釧路市で20人、釧路町で10人発生するとの推計も出された。
人的被害に関しては、冬季の夕方に早期避難率が低かった場合の死者数は、釧路市約8万4000人、苫小牧市約4万人、函館市2万9000人、全道で約14万9000人が亡くなると試算した。
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