東京商工リサーチ(東京都千代田区)は8月16日、7月の「後継者難倒産」について分析した結果を公表した。後継者不在による「後継者難」倒産(負債1000万円以上)は、25件(前年同月比31.5%増)で4年ぶりに前年同月を上回った。倒産全体(494件)での構成比は5.0%で、2018年の4.5%を上回り7月としては過去最高を更新した。代表者の高齢化および後継者不在が経営上のリスクとなっていることを示す結果となった。
産業別では、建設業が2件(前年同月比33.3%減)、製造業が3件(同40.0%減)と2年ぶりに前年同月を下回った。一方、前年同月を上回ったのは、不動産業2件(同100.0%増)、サービス業他8件(同100.0%増)、卸売業4件(同100.0%増)など10産業中5産業にのぼる。業種別では、貸事務所業、土地賃貸業などが各1件で前年同月を上回った。
要因別では、代表者の「死亡」18件(前年同月比38.4%増、構成比72.0%)が最も多く、「体調不良」5件(同25.0%増、同20.0%)と合わせると、上位2要因だけで9割超えとなる。構成比も前年同月から2.6ポイント上昇しており、代表者の高齢化が進むなかで「死亡」「体調不良」が事業運営の大きなリスクとなっている。
形態別では、「破産」が23件(前年同月比27.7%増、構成比92.0%)と最多。特別清算は2件(前年同月ゼロ)で、すべて消滅型の倒産だった。業績回復が遅れるなか、後継者育成や事業承継の準備は後回しとなっているため、「破産」を選択するケースが大半とみられる。
資本金別では、1000万円未満が15件(前年同期比25.0%増、構成比60.0%)と6割を占めている。5000万円以上(2件)も2年ぶりに発生するなど、事業規模を問わず、後継者問題が広がりつつある。
2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)と高齢化が進むなか、コロナ禍での業績回復の遅れなどから多くの中小企業では後継者育成などが先送りされ、事業継続への高いハードルになってきている。コロナ関連の資金繰り支援効果の薄れから企業倒産が4カ月連続で前年同月を上回り、「後継者難」倒産の構成比も上昇を続けている。金融機関・取引企業において、代表者の年齢や後継者(候補)の有無が与信判断のひとつとなるなど、後継者不在への対応は急務となっているが、中小・零細企業が自ら対処することは難しいのが現状。東京商工リサーチは、コロナ禍の出口戦略として、政府や金融機関と外部機関が一体となった対応が求められるとしている。
同調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年7月の「後継者難」倒産(負債1000万円以上)を抽出、分析したもの。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。