「世界的なインフレに関連するコストの上昇に直面し協力する必要があるとき、これらの関税は国境の両側で住宅と木材をより高価にする。BC州の木材製品の公正な市場を提唱し、針葉樹製材に対するこの不公平な米国の貿易行動に対して精力的に防御していく。北米自由貿易協定、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA)、世界貿易機関(WTO)など、利用可能なすべての手段を通じて訴訟を執拗に追求する」
米国に出荷されるカナダ産針葉樹製材に一定の規制をかけるという政策は、米国商務省の慣行だ。米国製材連合会(U.S. Lumber Coalition、ワシントンDC)を原告とし、カナダ政府により公有林原木価格で不当に助成されたカナダ産針葉樹製材の大量流入が米国の製材産業を脅かしているとして米国商務省に対し訴えを起こし、これを商務省が審査し前記したような輸入関税を賦課することで輸入規制措置を講じる。
この流れも毎回変わらない。そしてカナダ側は輸入税として米国に税を徴収されるぐらいならカナダ側が輸出税を賦課することで事実上自主規制し、カナダ側で徴収された税はカナダ国内に還元させるというのが最後の落としどころとなってきた。今回も最終的には数年間の輸出関税適用でまとまる公算が強い。
米国の針葉樹製材輸入は2021年157億4100万ボードフィート(約3700万立方メートル、実材積換算推定2500万立方メートル弱)で、このうちカナダからの輸入は135億9300万ボードフィート(約3200万立方メートル、同2100万立方メートル)と全体の86%を占めた。
欧州をはじめカナダ以外からの製材輸入が年々増加しており、かつての95%前後というカナダ産比率は低下しているが、カナダにとって何よりも重要な市場は米国である。年間6000万立方㍍前後の針葉樹製材生産を誇る米国にとっても米国内針葉樹製材需要の1/3以上をカナダからの輸入に依存している関係であり、半世紀近くにわたるカナダ産針葉樹製材への関税措置は独特の関係性である。
米加間の関税係争問題はいくつかの変化をもたらしてきた。米国市場にとってはカナダ以外の輸入税が付加されない針葉樹製材産地からの輸入機会の拡大である。欧州をはじめとした製材産地からの輸入量は2021年、21億4600万ボードフィート(約500万立方メートル)と2018年比で82%増加した。
カナダ産地にとっては中国に代表される米国以外の市場開拓だ。日本も該当するが、日本向け輸出の主力である2×4工法用SPF製材は日本が輸入関税を賦課しており無税というわけではない。
日本市場に輸出シフトは働かない
かつてカナダにとって日本が海外最大の市場であった当時、米加間の貿易係争による高率の米国輸入税を敬遠し日本市場へのコミットを強化する動きもあったが、2021年、日本へのカナダ産針葉樹製材輸出量は5億8822万ボードフィート(140万立方メートル弱)と2013年比でも半減しており、カナダの針葉樹製材輸出に占める日本向け比率は4%弱に過ぎない。
今回の関税問題で仮に高率の関税が適用されても日本市場への輸出シフトが働く状況ではない。ただ、米国の論法、すなわちカナダは公有林立木価格で不当に助成されているとの主張がその通りであれば日本もカナダ産針葉樹製材輸入を規制する根拠になるかもしれない。それよりも危惧されることは日本の杉製材がフェンス材等で米国市場に出荷されている点だ。
今は米国から何も言われていないし眼中にないと思うが、間伐助事業などで国産材針葉樹原木が国により助成されているとして牽制される可能性は考慮しておく必要がありそうだ。
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