商圏を動かすという選択肢
今回のケースでは商圏を動かさないことを前提で考えていますが、場合によっては商圏を動かす、という選択肢もあります。
大手の企業が広域で商品を販売するときに、売上を増やす方法は、実は二つしかありません。
ひとつは新商品を発表すること、もうひとつは新しい店舗、営業所を出店することです。
突き詰めると売上拡大策はこの二つのバリエーションになります。今ある状況で、限界まで努力した後、売上を伸ばそうと思ったらこの二つの方向性のどちらかしかありません。
それ以上売上が伸びなくなったということは、つまりその商圏においてその商品は飽和状態に達したということです。そうなると同じ場所で同じことを漫然と続けていても、状況が良くなることは考えにくいです。
何の理由もなく、全く同じ商品の需要がまた伸びていく可能性は低いですし、むりやり受注額を増やそうとすると、客単価を下げるだけになってしまいます。
そうなった後は、飽和した状態を薄めるために対象エリアを広げるか、新たな地域に商圏を変えるか、もしくは新商品を開発して違う需要を呼び起こすか、という対策をとることになります。
しかしながらパワービルダーではない小規模の工務店が、売上を伸ばすために、大手と同じ方法をとるのは困難です。
たとえば、新たな営業所を出そうにも、人を確保できない。中小企業は人的リソースの幅が限られていることがほとんどだからです。人を急に増やすことは、なかなかできません。
かといって研究開発のための費用や時間がたっぷりあるわけでもなく、画期的な新商品をいちから開発する、というのも現実的な答えではありません。
中小零細企業の場合、販路を広げるにしても商品を開発するにしても、リソースは限られており、リソースが限られているから規模の拡大が難しい、というふうに、話が堂々巡りになってしまいます。
小規模の企業にとって、そういった前提条件はどこも同じなはずですが、それでも、会社によって差は付きますよね。
では、それなりに売上を伸ばしている地域一番の店はどうしているのでしょうか。街で人気のあるラーメン屋は?近所でも行列のできるパン屋は、どのような企業努力をしているのでしょうか?同じく地域に根ざした小さな商いをしている我々工務店は、彼らの方法を見習うことができます。
それが、「ともかく何かのいちばんであることを発信すること」なのです。
そしてその「いちばん」を誰に発信するのか。それを知ることが必要です。
藤本 修(ふじもと・おさむ)
大手ハウスメーカーの営業などを経て香川県で工務店アンビエントホームを起業。その後そのノウハウを提供する「アンビエ ントホームネットワーク」を設立。さらに顧客管理 システムを外販するCRMを立ち上げた。現在は工務店の指導・講演で飛びまわる。
抜粋を新建ハウジングプラスワン2012年8月号に掲載しています。
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