ペルソナを設定
リノベに合わせて住まい手のペルソナを30代の夫婦と小さな子どもたちの家族に設定。子育て真っ盛りの夫婦の使い勝手がいいように玄関から直接キッチンに向かう動線を確保し、その間にシュークロークやパントリーなど豊富な収納スペースを設けた。「夫の趣味は“ガンプラ(アニメのガンダムのプラモデル)づくり”」との設定に基づき、吹き抜けのリビングの1面を下から上まで間接照明とキャットウォーク付きのギャラリー棚とし、つくったプラモデルなどを飾って楽しめるようにした。将来的にはパーティションを設けて子ども部屋などに活用できる2階のフリースペースには、プラモデルづくりなどさまざまな作業や仕事にも使えるカウンターを設置した。
床は、1階が新築でも定番の長野県(北相木村)産のカラマツ、2階が岐阜県産のヒノキの無垢材を採用。壁も自社で定番としている、いずれもドイツ製の壁紙(コバウ)と塗料(ビオシール)で仕上げた。小嶋さんは「コバウとビオシールは、住まい手が簡単に上塗り(補修)できて、非常にメンテナンス性が高い」と評価する。また、キッチンや収納などの多くは、自社の大工が造作した。
ストック活用、より現実的に
常設のモデルハウスを設けて、今後、本質改善型のリノベーションの事業化に本格的に取り組んでいこうと考える小嶋さんは「資材価格の高騰や土地の価格上昇などに伴う住宅の高額化が加速していて、だれもが新築を手に入れられる時代ではなくなり、そのなかで、ストック(中古)をリノベして活用するという選択肢が、より現実的になっていくのではないか」との見方を示す。
そのうえで小嶋さんは「技術力が必要で手間もかかる本質改善型のリノベは、ハウスメーカーなどは手がけることが難しく、地域工務店にしかできない仕事だ」と訴える。脱炭素化が叫ばれる社会で「ある程度、省エネ性能が担保されている新築に対して、エネルギーを多く消費する既存住宅を改善して省エネ性を高めることは脱炭素化への貢献度が高く、そうした観点からも地域のつくり手としてリノベーションはやりがいのある事業だ」とも語る。
総合的な提案力を高める
小嶋さんはリノベを事業化していくうえで、「ただ単に技術力を上げるだけではなく、顧客(家族)の今と将来の暮らし方を丁寧にヒアリングして、そのために必要な選択肢の1つとしてリノベを提示する総合的な提案力こそが必要だ」とする。同社が扱うリノベ案件では、地域に多い延べ床面積が60坪を超えるような和風の住宅の1階部分だけをリノベによって性能を高めて、2階部分は外部倉庫として扱うといったパターンも増えており、「予算や家族構成、将来の暮らし方から、建て替えなのか既存を活用するのか顧客(家族)にとってベストな選択を導き出す提案力と、あらゆる選択肢を実現できる技術力が求められている」(小嶋さん)。
同社は、G2超・耐震等級3を標準仕様とする性能、デザインに優れる自然素材を用いた家づくりにより、新築で確かなブランドを築いてきた。新築については、7月スタートの来期の着工枠(9棟)が現時点で埋まっている。今後は、モデルハウスを体感拠点として、潜在的なリノベ需要の掘り起こしを重点的に進めながら、将来的には、新築でも中古でもリノベでも「しなのいえ工房の家なら安心」というブランドを目指す考えだ。
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