會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は7月28日、アームロボット式のコンクリート3Dプリンタ(c3dp)でデザイン性の高い建築物や造形物を設計施工する事業を本格的にスタートしたと発表した。
同事業の第1弾として、太陽の森ディマシオ美術館(北海道新冠町)併設のグランピング施設3棟を建築した。同社によると、c3dpによる宿泊施設の“印刷”は今回が国内初のケースという。
c3dpは、スピード施工で省人化と工期短縮を図れるだけでなく、型枠を用いず曲線の形状や複雑なテクスチャーを高速で積層造形することができるため、施主の想いをそのままカタチにかえることで、建築に新しい価値を生み出せるとしている。
宿泊棟本体は、アームロボットが基礎の上に直接印刷を行うオンサイトプリンティングを採用。高さ2.6m、床面積9.8m2の建物で、各宿泊棟5~6枚のパーツで構成されており、準備等をふくめ1日1~2枚ずつ印刷した。施工は、氷点下20度以下になる厳冬期に行われ、仮囲いによる適切な温度管理で乗り切ったという。2層の中空層を持つ外装を型枠代わりに使用し、外側の層には鉄筋コンクリート造の構造体をつくり、内側の層には断熱材を充填した。
宿泊棟の周囲を囲う高さ1.2m、直径およそ12mの塀は、工場で印刷したパーツ12枚をプレキャスト部材として現場に運び、模様が続くように組み合わせた。工場でのプレキャスト製造は、ロボットの準備・調整時間を削減できるため、オンサイトプリンティングよりも工期を短縮できるという。
太陽の森ディマシオ美術館は、現代フランス作家のジェラール・ディマシオ氏が描いた世界最大の油彩画を中心に、200点以上のディマシオ作品を展示している。来館者増を図るため、新冠開発共同企業体(新冠町)が母体となり、グランピング施設「GLAMPING VILLAGE 紅葉の里」の整備がすすめられたが、通常の建築手法ではディマシオ氏の世界観が表現できないとして、自由な造形が可能なc3dpが採用された。
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