「どこまでいっても俺はきこりがルーツなんだよね。木は生き物で、人や動物と同じように接することが当たり前。命をいただいて家をつくっているということを絶対忘れちゃいけないと思う」。
そう話すのは素朴屋(山梨県北杜市)代表の今井久志さんだ。伝統構法による家づくりにこだわりながら、きこり出身の工務店経営者として世界へ羽ばたく夢を描く。
※この記事は、デジタル配信用に再編集したもので、掲載内容は取材時のものです。
がっしりした体格と、丸刈りにした頭に、日焼けした肌というワイルドな風貌にもかかわらず、今井さんの物腰は柔らかく、語り口は穏やかだ。きこりの魂を忘れないとは言うが、雰囲気的には懐の深い大工の棟梁そのものだ。
今井さんは建築とは無縁の学生時代を送った。「海の男になりたい」と、地元の埼玉県入間市から、東京都立大島南高校海洋科に入学。卒業後は、水産系の大学に進学し、漁業を学ぶことに没頭した。だが、大学卒業間近になり、「本当にやりたことは何だろう」と自問自答した結果、海の男への道は進まないことを決断。卒業後、友人のつてをたどって長野県の林業が盛んな木曽地域の会社にアルバイトとして入った。
きこりとして1年間、働いた後、海外を放浪。「ずっと遊んでいるわけにいかない」と、カナダのバンクーバーでログハウス専門の住宅会社に就職した。拙い英語を操りながら約3年間働き、結婚を機に帰国。縁もゆかりもない山梨県に移住し、再びきこりとして働いた後、2006年に素朴屋を創業した。
「なんでも屋」として事業スタート
きこりの経験を生かし、特殊伐採を中心に、「なんでも屋」として事業をスタート。地元の工務店や建設会社、不動産会社などを片っ端からドブ板営業して回り、仕事を取っていった。今井さんは「何か志や想いがあったわけではなく、自分にやれることを精一杯やろうとしていただけ」と当時の心情を吐露する。
ウッドデッキ製作からリフォーム、建築現場の応援まで幅広い仕事をこなしながら、利益を建築事業に投資し、徐々に工務店業へとシフトした。・・・・
この記事は、『新建ハウジング別冊・ワンテーママガジン2021年9月号 がんばる地場工務店』(2021年8月30日発行)P.18~に掲載しています。
今年も新建ハウジング夏の恒例企画「がんばる地場工務店」を予定しております。
全国の「工務店の風景写真」大募集!詳細はこちら
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。