LIXIL(東京都江東区)はこのほど、同社が開発した「太陽光発電(PV)ロールスクリーンシステム」の実証実験を、同社オフィスビルにて開始した。
同システムは、ロールスクリーンの受光面に柔軟性のあるPVセルを配置し、吸収された光の一部を電力に変換するというもの。発電することで、従来のロールスクリーンよりも屋内側に入り込む熱を抑制できる。窓ガラス越しの発電性能は64.8W/m2で、ガラスなしと比較しても90.7%を維持している。実証用PVロールスクリーン(標準色)の出力は80.9W。
PVロールスクリーンの両端を端部密閉レールでガイドすることで、窓ガラスと簡易ダブルスキン化が図れるため、夏季の日射取得率は従来の「窓+ロールスクリーン」よりも19.1%向上、冬季の断熱性も従来より44.1%向上させることが可能。窓まわり全体の価値向上とともに、脱炭素化に貢献できるとしている。
太陽光発電モジュールを従来のロールスクリーンのように巻き取ることで、視界の自由度の確保とファザードデザインの維持が可能。屋内側から後付けでき、電気工事も不要なため、施工・メンテナンスの制約が少なく、工期等を短縮できる。発電した電力はカバーフレーム内に内蔵の蓄電池へ充電し、USBポートから自由に取り出せるため、災害時に役立てることができるという。発電や蓄電、開閉状態はクラウドでデータを管理制御しており、PCなどから状況を確認できるほか、開閉操作をリモコンやPCなどで行うことができる。
同社は、発電や蓄電機能および電力取出機能などに加え、施工性やメンテナンス性、プライバシーへの配慮など従来のロールスクリーンと同様の機能性・施工性も備えた同システムで、快適なオフィス空間を実現するとしている。
2020年度にはNEDO事業において「デザイン性を考慮した後付け可能な新築・既築向けBIPVシステム」として採択。現在、実証品開発フェーズから実証実験フェーズへと移行し検討を進めている。実証面積は約178m2、総数99枚のPVロールスクリーン「紫」「青」「緑」「黄(金)」「茶」「銀」「薄銀」「白」計8色を、既存の窓部に後付設置している。
建築物が密集する東京では、CO2排出量全体の70%以上が建造物から排出されており、新築だけでなく既築ビルのグリーン化推進も急務となっている。同社は、新築ビルの壁面に設置する太陽光発電設備を提供してきたが、既築ビルへは施工性や電気的エラー発生に伴うメンテナンスの問題などからBIPV(建材一体型太陽光発電設備)の導入が難しかった。そのため、屋内から後付けで設置できる太陽光発電ブラインドを開発。今回、さらに技術を進化させ、多様な価値を付与した「PVロールスクリーンシステム」を新たに考案した。「省エネ」「創エネ」「蓄エネ」の技術で既築ビルの高性能化を推進し、脱炭素化への貢献とBCPに寄与するとしている。
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