アイジーコンサルティング(本社:静岡県浜松市)が、住宅のアフターマーケティングに特化したネットワーク「ieGress(イエグレス)」を立ち上げた。そのねらいと活用法を同社・井上元太さんと中村勇太さんに聞いた。また、加盟店2社にインタビューし、現在感じているメリット、描いている未来について聞いた。
「ieGress」は、戸建て木造住宅のアフターマーケティングに特化した全国ネットワークとして昨年12月に誕生した。工務店にとってのアフターマーケティングは、住宅引き渡し後の定期点検やメンテナンスといった“家守り”のこと。顧客との接点を定期的に維持し、満足を提供し続けることでリピートや紹介、口コミが期待できるため、新規顧客の獲得がより難しくなる今後は、アフターマーケティングの重要性が格段に高まるとされる。「そこに気づいている工務店さんはいるものの、実際に家守りを継続的に行い、LTV(=顧客生涯価値)を最大化できているかというと、まだまだ十分ではないと感じます」と中村さんは言う。
ieGressは、こうした課題を解決するアフターマーケティングの受け皿としても機能。顧客との接点を維持する仕組みや人材を自前で持たない工務店の身近な相談先・外注先として頼れるネットワークでもあるのだ。
床下点検で接点維持
大きな特徴の1つは、「床下点検・シロアリ防除」を切り口に、顧客との定期的な接点維持を図る仕組みが整っていること。ここには、アイジーコンサルティングが長年積み上げてきたノウハウが詰まっているという。
「当社はシロアリ防除に取り組んで今年で123年目。東海・関東エリアで実績を重ね、営業・技術的なノウハウはもちろん、安定的な売上げを確保するスキームを確立しています。この手法を自分たちのエリアにとどめておくのはもったいない、ぜひ全国の住宅関係者に役立ててほしいという思いがあり、加盟店には3カ月間の座学と実地研修でシロアリや木材の基礎知識、防除技術を惜しみなく伝授し、事業化を手厚くサポートします」(同社・井上さん)。
新しい家守りの形を一緒に
もう1つの大きな特徴が、「学び合うネットワーク」であること。「本部から加盟店への一方通行のノウハウ提供ではなく、住宅に携わるあらゆる業種を加盟店として歓迎。それぞれがもともと持っていた素晴らしいノウハウやアイデアを教え合うことで、その地域に合った新しい家守りの形を一緒につくっていけたら理想的」と井上さんは話す。
例えば、同社のノウハウだけでも、床下点検・シロアリ防除に始まり、住まいの定期点検や外壁メンテナンス、人材育成など多岐にわたる。これらを加盟店同士で共有し、自社に持ち帰ることで、企業の「多能工化」、事業の「多角化」が可能になってくるという。
工務店の可能性
加盟店第1号はハウスクリーニング、第2号は浄化槽点検清掃を主業務とする専門業者で、各社はそれぞれの事業特性と地元の実情に合わせたやり方で、本業+床下点検・シロアリ防除サービスを展開していく。
工務店はどんな関わり方ができそうか。1つは、地元のieGress加盟店と手を組んで家守りサービスの一部を外注化するとともに、リフォーム・リノベーションの受注や口コミに発展するような定期点検のメニューをつくり、家守りに共同で取り組むやり方。
もう1つは、工務店自身がieGressの加盟店となって定期点検にシロアリ防除のメニューを加え、シロアリ対策を自社で完結するやり方。さらにこれを事業化して、自社物件だけでなく他社物件にもサービスを提供することで、新築とは別の収益の柱を育てていくことができるという。
「点検」という文化を一緒に育てたい
―― 加盟のきっかけ、決め手は?
ハウスクリーニングの仕事をしていると、エンドユーザーのお客様からシロアリ相談を受ける機会が度々あり、潜在需要の大きさを痛感し、自社で高品質なシロアリ防除サービスをやりたいという興味はずっとありました。加盟の決め手は信頼感。120年以上も前から培ってきた技術力、仕事や顧客に対する真面目で誠実な姿勢、どれも信頼できるものでした。また、成長途上のネットワークであることも魅力的だと感じました。
―― 事業開始後の変化や成果は?
今年5月から床下点検・シロアリ防除のサービスを開始し、知り合いの工務店さんから点検のお客様を紹介してもらうケースが徐々に増えてきました。地元の工務店やリフォーム店と提携し、物件引き渡し後の床下点検を当社が担い、事業者とエンドユーザーの橋渡し役に徹することで双方に喜んでもらえたら。まだ走り出したばかりですが売上げもかなり伸びており、若い社員が活躍できる職場環境を整える意味でもプラスになっています。
―― 今後の展望について。
一般的には、シロアリを発見してから対策を考え始めますが、実際にはすでに木部の被害が進行していることがほとんど。それを防ぐには、定期的な床下点検が不可欠です。私たちの地元である新潟は地震が多く、2004年の新潟県中越地震後の調査によると全半壊した建物のなかには蟻害被害にあった構造材が多く見受けられたそうです。そうした被害も、定期的な点検をしていればある程度抑えられたはず。だから私は地元で「点検の文化」を育てたいと思っています。点検事業はまだライバルが少ないブルーオーシャン。ゆくゆくは「床下とシロアリはieGress に任せおけば安心」「ieGressなら誠実に仕事をしてくれるし技術力も高い」と認知してもらえるような全国ネットワークにしたいですね。
「なりたい姿」に変われるネットワーク
―― 加盟のきっかけ、決め手は?
人口10万人商圏で浄化槽の清掃・点検事業をしており、今後の人口減を見据えて別の収益の柱をつくるためさまざまなことに挑戦してきました。ただ、どれもうまくいかず手詰まり状態。そんな時にieGressに声をかけてもらいました。「儲かる仕事よりも尊敬できる人と仕事をしたい」と考えてきた私にとって、アイジーコンサルティングは理想の相手。また、床下点検の現場に同行させてもらったところ、お客様自身がサービスに納得し満足し、永続的なお付き合いを望んでいる様子が伝わってきて、強引な営業をする必要がないのも印象的でした。
―― どんな事業展開を考えている?
すでに浄化槽の清掃・点検のお客様リストが1000件以上あるので、その方たちに床下点検・シロアリ防除のアナウンスをすることから始めるつもりです。とはいえ、まったく未知の市場に乗り出すわけではなく、本業の延長線上でできるビジネス。これまでもお客様と定期的に顔を合わせて話をしたり、ニュースレターを手渡すといったことを日常的にしてきたので、点検箇所が1つ増えるだけ。本業との相性がいいので、工務店さんや不動産屋さんのニーズにも柔軟に対応できると考えています。
―― 加盟のメリットと今後の展望について。
自社を変えたいと願う事業者にとって、ieGressはライザップのような存在です。メリットの1つは、会社のあり方、社員の働きがいなどを考えるうえでアイジーコンサルティングがいいお手本になってくれること。また、これまでは浄化槽起点でしか事業を捉えていませんでしたが、ieGressに出会ったことで「ハウスメンテナンス」市場に進出するという新しい方向性が定まりました。
シロアリと聞くとどうしてもネガティブな印象を持ちますが、それは誰がどんなふうにいくらでやってくれるかがわからないから。だからieGressは、安全でクリーンで真っ先に頼ってもらえるネットワークにしたいです。
ieGress 運営会社:アイジーコンサルティング
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-17-2 10F
Mail:[email protected] TEL:03-3400-7517 FAX:03-3407-1750
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