連載「最小人数で生き残るnano工務店の経営術」は、正社員3人程度の最少人数で安定した受注を得ている工務店を取材し、経営手法や人気の秘密を探る。そこには縮小化する市場のなかで最適化を図るためのヒントが隠されているはずだ。
今回は番外編として、木村光行さん、渡辺智紀さん、天野洋平さんといった3人の大工工務店代表の取材をお届けする。全員が大型パネル製造のウッドステーション内の研究会「大工の会」の中核メンバーであり、三者三様の取り組みをしている。3人に大工の課題と未来像について聞いた。
大工工務店はなぜ減った
業界全体を見ると、大工が起業した「大工工務店」の割合は激減している。一方でナノ工務店には大工工務店が目立つ。まずは3人の話から大工工務店が減った経緯を整理する。そして、ナノ工務店に意欲的な大工工務店が多い理由を探る。
大工工務店が減った根本的な理由はプレカットだ。プレカットは木材の入手と刻みという住宅生産の根幹を大工から奪った。大工の仕事は矮小化され、現場で加工済の部材を組み立てることが主な仕事となった。
同時期に構法も変わり、大壁が主体となった。軸組などは完成時に隠れるため、仕事の良し悪しが判断されなくなった。そして契約は「1棟いくら」の手間請け。こうなると大工が稼ぐ方法はただ1つ。スピードだ。早く工事を終わらせて現場の数を増やすしかない。
スピード勝負とは体力勝負だ。若いうちは無理が効くが、そのうち体にガタがくる。腕で勝負しようにもスピード以外に積み上げた技術がないため、歳を重ね取るごとに収入は下がる。当然、離職や廃業が増える。起業して元請けを目指すどころではないのが現状だ。
店舗から実験棟、 空き家活用まで手掛ける
では大工に逆風が吹くなか、3人は・・・
この記事は最新号『新建ハウジング紙面 7月20日号 4-5面』に掲載しています。
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