クラボウ(大阪市)化成品事業部と東京大学大学院工学系研究科(東京都文京区)は、共同で行ってきた建設用3Dプリンティング技術の研究開発についてこのほど、実際に造形物を製作するなど取り組みを本格化すると発表した。
両者は4月に共同研究契約を締結。7月からは、数値解析に基づいて内部構造を設計し、建設用3Dプリンターにて造形物を製作する。造形物の材料や配合、力学特性の異方性などを考慮した構造性能評価技術の開発と、非線形構造解析システムおよび人工知能を活用したメタマテリアル技術の開発・実証を行い、セメント系材料において新たな物性の獲得を目指す。この取り組みにより、強度・靭性を向上させる新たな物性を有する材料や、意匠性の向上、省資源化の実現を図るとしている。
クラボウは建設用3Dプリンターに関する技術情報、東京大学はメタマテリアル技術の数値解析および解析データをそれぞれ提供する。
2023年以降は、メタマテリアル技術の確立に向け実証実験を実施する予定。クラボウは、同技術を建築・土木分野で活用し、ノウハウを蓄積することで建設業界の課題解決に取り組むとともに、高い居住性や安全性などが求められる住宅分野での活用も検討する。東京大学は、メタマテリアル技術を通してセメント系材料の新たな機能や価値を創出し、同技術の社会実装を目指す。将来的には同技術に加え、建設用3Dプリンターに利用可能かつCO2削減に貢献できる低炭素型のセメント系材料の開発も共同で行っていくとしている。
クラボウは、建設業界の人手不足や生産性向上という課題解決を目指し、2021年5月から建設用3Dプリンティング事業を展開。東京大学社会基盤学専攻 コンクリート研究室は、2020年から独自開発の数値解析技術を活用したセメント系材料のメタマテリアル技術に関する研究を行っているが、シミュレーション結果を再現する造形精度に課題があった。両者は、今回の契約で建設用3Dプリンターによる造形物の安全性向上と、材料コストおよび環境負荷低減に取り組むことに合意。双方の技術を融合してセメント系メタマテリアル技術の確立を目指し、産学連携による共同研究を推進するとしている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。