東京商工リサーチ(東京都千代田区)は7月14日、2022年上半期(1-6月)の「後継者難倒産」について分析した結果を公表した。後継者不在による「後継者難」倒産(負債1000万円以上)は、前年同期比17.8%増の224件と急増し、初の200件超えとなった。2013年の調査開始以来、上半期では過去最多。倒産全体(3060件)での構成比は前年同期1.1ポイント増の7.3%で、上半期初の7%超えを記録。後継者問題が経営において重要な課題となっていることを示す結果となった。
産業別では、建設業が51件(前年同期比30.7%増、構成比22.7%)で、サービス業他の54件(同35.0%増)に次いで多い。このほか製造業34件(同3.0%増)、卸売業37件(同19.3%増)など、10産業のうち7産業が前年同期を上回った。一方、不動産業は7件(同50.0%減)で4年ぶりに減少。金融・保険業は、2年ぶりにゼロ(前年同期1件)、農・林・漁・鉱業は、前年同期と同件数の2件だった。
業種別では、土木工事業7件(前年同期1件)、建築工事業9件(同8件)、内装工事業7件(同5件)、建築設計業5件(同4件)などで前年同期を上回った。
要因別では、代表者の「死亡」が122件(前年同期比25.7%増、構成比54.4%)と、全体の半数以上となった。「体調不良」は71件(同24.5%増、同31.6%)で、上位2要因をあわせて9割近くを占めている。構成比も前年同期から5.1ポイント上昇しており、代表者の高齢化が進むなかで「死亡」「体調不良」が事業運営の大きなリスクとなっている。
形態別では、「破産」が206件(前年同期比19.7%増、構成比91.9%)と最多。業績が厳しく、後継者の育成や事業承継の準備まで手が回っていないため、「破産」を選択するケースが大半とみられる。
資本金別では、1000万円未満が128件(前年同期比28.0%増、構成比57.1%)と約6割を占めている。1億円以上(2件)が4年ぶりに発生するなど、事業規模を問わず、後継者問題が広がりつつある。
2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)と高齢化が進むなか、コロナ禍での業績回復の遅れ、円安や資源高、人手不足などにより、多くの中小企業では後継者育成などが先送りされ、事業継続への高いハードルになってきている。金融機関は、企業の事業性評価に、代表者の年齢や後継者の有無も判断材料としているため、後継者問題が将来を見据えた施策などにも影響を及ぼす可能性がある。東京商工リサーチは今後、後継者問題の解決には、自治体や金融機関だけでなく、外部の支援機関との協力も重要となってくるとしている。
同調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年上半期(1-6月)の「後継者難」倒産(負債1000万円以上)を抽出、分析したもの。
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