ブレずに経営理念と家づくりの思いを貫く工務店は危機に強い――。
ここでは、それを実証している実際の工務店事例を紹介する。工務店の最大の武器である「ものづくり」の基本を緩みなく固めつつ、契約や工程管理、アフター対応などの基本についても徹底していることが、めまぐるしく変化し厳しさを増す市場に対する〝強さ〟となっていることが分かる。もちろん、目の前にある危機に対処し、それを乗り越えることは何よりも大切だが、その先に向けた〝土台固め〟についても、いまだからこそ考えたい。
case.1 井坪工務店[長野県飯田市]
井坪工務店(長野県飯田市)は創業以来60年近くにわたり理念経営を掲げ、自社の大工が良質な木材を用いて建てる家にこだわってきた。厳しさを増す現在の市場においても、営業を置かずに年間約30棟を堅持し、常に一定の受注残を保ちながら安定的な経営を行っている。社長の井坪寿晴さんは「〝魔法の杖〟はない。良くない経済情勢や市場でこそ、積み上げてきたことの真価が問われる」と語る。
井坪さんは、大工出身の経営者だ。今から数十年前、住宅建築ラッシュだった当時、東京都内で開かれた工務店向けの経営セミナーで示された「これからの時代、大工は外注(下請け)化して変動費としてみるのが効率的な経営に欠かせない」という考え方に、強烈な違和感を覚えた。「何を言っているんだ。大工こそが経営の柱じゃないか」と思ったことを鮮明に記憶しているという。
そうした体験もあり、その後、自身が 35 歳で社長に就任してからも、自社がそれまで積み重ねてきた社員大工による木の家づくりの歴史を継承し、経営の「ど真ん中」に据えてきた。「時代の潮流を受けて『営業が大事だ。工務店に必要なのは営業力だ』と声高に叫ばれれば叫ばれるほど、だったら真のサービスを提供できる大工集団になれたら “ 無敵 ” ではないかと考えた」(井坪さん)。
営業担当を置かずに工場・現場ツアーで伝える
社長就任前の専務時代には、自社の大工のクオリティを「ハイレベルなサービスエンジニアの域まで高める」ことを狙い、“ 棟梁選挙 ” を敢行。年功序列のそれまでの慣習を改め、マネジメントができる棟梁の資質を備えた人材を適所に配置できる仕組みを整えた。それにより組織が活性化し全体のモチベーションが飛躍的にアップ。井坪さんは・・・・
続きは「工務店のための危機突破読本2022」
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