過去5年間に熱中症で亡くなった最多職種は建設業-。
厚生労働省がこのほど公表した、職種別の「死傷災害」の状況を取りまとめた調査結果で明らかになった。異例の早さとなった梅雨明けで厳しい暑さが本格化する中、危険と隣り合わせの炎天下でも、現場を止めることはできない。
資材価格の高騰など、厳しさを増す住宅産業市場で、もしも現場で熱中症など起きてはならない“事故”が発生してしまったら、それは即、工務店の経営を左右するようなダメージにつながりかねない。職人たちの安全確保はどうしたら良いのか。
熱中症対策をからめて、いますぐに現場における安全対策を徹底的に見直し、強化を図りたい。行政、工務店、メーカーに取材し、現状と対策を追った。
入職直後の作業員、暑熱順化の配慮を
1人作業、二次災害に要注意
厚生労働省の「令和3年職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」によると、2021年の死傷者と4日以上の休業を必要とする疾病者の数は561人で、このうち死亡者は20人だった。過去3年の状況と比較すると、死傷者数、死亡者数ともいずれの年よりも下回った。コロナ禍による外出自粛の影響やテレワークの定着、気候状況などが影響しているという。
2021年の死亡災害のうち、建設業は11件と全職種で最多となり、2017年~2021年の過去5年間においても、死傷者878人で、そのうち死亡46人と、全職種で最も死亡災害が多い職種となっている。
「暑さ指数」適切な運用を
厚労省労働基準局・安全衛生部の担当者によると、他の職種と比較して建設業が多いのは、労働に従事する労働者の母数が多いことが影響しているという。そのうえで同担当は建設業における労働災害について、「入職直後で現場に慣れていないことや、夏季休暇明けで明らかに暑熱順化していないケースなどがあった。熱中症の危険度を判断するWBGT(湿球黒球温度)=暑さ指数が適切に運用されておらず、一部で基準値に応じた措置が講じられていない事例もある」と指摘する。
体調不良を訴え、休憩させた際に周囲の目が行き届かず、気づいたときには容態が急激に悪化していたり、1人作業をしていて倒れているところを発見されたりと、熱中症発症から救急搬送までに時間がかかっていると考えられる事例も報告されている。
熱中症の発症が、二次災害の発生につながる事例もある・・・・・
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この記事は最新号『新建ハウジング7月10日号 1〜3面』に掲載しています。
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