税収は年間1.1億円 二重課税の指摘も
「事業用発電パネル税」の納税義務の対象は、市内に設置された太陽光発電設備を使用する発電事業者。ただし、▽建築物の屋根などに設置した発電事業▽FIT認定出力が10kW未満▽同50kw未満で事業区域に県の砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域が含まないもの――は除外する。令和3年度末の時点で対象となる設備は278件、想定される年間発電出力は25万5722kw。
税率は太陽光発電設備パネル1m2あたり50円。これは売電収入の0.75%~2.5%に相当する。特例として発電容量1kWに6を乗じた値を総面積とみなすこともできる。「影響評価条例」に基づき、地域住民などへの寄附金を支出した場合は、税額の2割を上限に寄附金相当額を控除する。これにより年間約1億1千万円の税収(うち徴税費用は約4~500万円)が見込む。課税内容は5年ごとに見直される。
パネルの面積当たりで課税した場合、公平性に対する懸念が浮かび上がる。日本最大規模のメガソーラーを運営するパシフィコ・エナジー1社に納税負担が大きくのしかかるためだ。場合によっては悪質な運営をする他事業者の不始末を、同社が実質的に肩代わりする事態となることも考えられる。他にも「パネルの面積に対する課税は固定資産税他との二重課税になる」との指摘もある。
妥協点はあるのか 両者の協議は7月以降に
2018年9月開催の市議会で「影響評価条例」が全会一致で可決したのに対し「事業用発電パネル税」の成立は難航した。市は審議案を2019年6月、2020年9月と議会に上程したが否決されている。その後も審議を重ね、3回目となる2021年12月議会でようやく賛成多数で可決され12月21日、同条例の公布に至った。同日、総務相に同意を求めるため「法廷目的税新設協議書」を提出している。
同省地方財政審議会では2022年1月18日から6月1日までの間、11回にわたって同件について審議。この中で美作市とメガソーラー事業者に対しヒアリングを実施し、財政需要と課税の因果関係、納税義務者の負担、住民の理解などについて意見を聴取している。この時、事業者側から次のような意見があったことが、同審議会の資料に記されている。
具体的には▽固定資産税・法人事業税などとの二重課税である▽当初想定していなかった費用が加わることで利潤が減少する▽再生可能エネルギーの普及・カーボンニュートラルの実現など国の経済施策に反する▽再生可能エネルギー投資を促進する観点から、FIT認定を受けた太陽光発電設備は租税施策が重要視されるべき▽防災・環境対策が目的ならば、一部の太陽光発電資産を限定対象とするのは公平性に欠ける▽事業を開始する際、事前に国や県などの厳格な認定・規制・審査を経ている――。
両者のヒアリングを終えて審議会では「両者の主張に開きがあり、話し合いが不足している」と判断。「両者ともにできる限り調整したいとの意向を持っているため、再度協議を尽くすよう総務省から要請してはどうか」と結論付けた。
市の担当者によると、7月初旬にも協議に向けた日程調整を行うという。協議した上で総務省の判断が不同意となれば、第三者機関である国地方係争処理委員会に不服審査を申し立てるとも。「まずは協議しないことには先に進めない。大臣の判断もいつになるのか見当がつかない」と困惑した様子をうかがわせた。
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