愛知県東部の人気エリアで注文住宅、建売分譲、フルリノベーションを手がけるJUST(中尾一也社長)。自然素材を巧みに使ったデザイン性の高さで、地元地域の支持を長年集めている。そんな同社は昨年、「カネカのお家 ソーラーサーキット」を導入し、デザインと性能の両立を実現しようとしている。社長の中尾一也さんにねらいと成果を聞いた。
JUSTの設立は2002年。中尾さんの地元である日進市と長久手市にエリアを移し、注文住宅を始めたのは17年前だ。以降は地元に密着し、デザインと自然素材を重視した自由設計の空間が女性を中心に熱烈に支持され、右肩あがりで棟数を伸ばしてきた。
男女ともに納得できる家を
そんな家づくりの方向性を変えたのは今から3年前。得意のデザインに加え、性能にも比重を置くようになった。ねらいは大きく3つあるという。まず、子育て世帯の流入とともに同業者の参入が相次ぎ、より競争力をつける必要性がでてきたこと。エリア人気とともに地価が上がり、住宅取得層の予算が厳しくなるなか、ローコストに行くのか?付加価値を付けてハイエンドに行くのか?の2択のなかで、後者を選んだこと。さらに、大手製造業に勤める理系・技術系の男性が多い土地柄、これまでのように支持層が女性に集中するよりは、男性に興味を持ってもらえる要素が不可欠だと考えたからだという。「実際のところ、以前は“ デザインより性能派 ” の男性のニーズに応えることができないために2回目、3回目につながらず、かなりの機会損失になっていた」と振り返る。
また、SNSを使った情報発信が立ち遅れ、受注がやや落ち込むなど、うまくいかない時期が重なった。この状況をなんとか挽回しようと、断熱・気密・耐震といった性能への比重を高め、新築だけでなく性能向上リノベーションにも着手。事業のテコ入れを図ってきた。
空気感の違いを体感し「カネカSC」に加盟
性能に取り組むなかで中尾社長が実感したのは「差別化の難しさ」だ。「耐震等級3やZEHはもう珍しくないし、断熱性能1つとっても断熱材の厚みを増やせば誰でも求める性能が出せてしまう。私たちがいくら頑張ってもお客様からすれば『それならハウスメーカーのほうが安心だよね』となり、当社をあえて選ぶ決め手にならない」。
そんな時に出会ったのが、外断熱と二重通気を組み合わせたカネカ独自の技術を提供する住宅工法ネットワーク『カネカのお家 ソーラーサーキット』(以下:カネカSC)だという。夏は壁体内の二重通気層が気流をつくって床下ダンパーから熱と湿気を排出、冬は床下ダンパーを閉じて躯体の熱を逃しにくくする、パッシブを基本にした仕組みだ。
2021年6月、中尾さんを含めた役員3人は岐阜にあるカネカSCのモデルハウスを訪ねる。「ちょうど梅雨時で、外は雨でジメジメと蒸し暑いのに家の中に入るとこれまで味わったことのない空気感で満たされており、それがとても心地よかった。特に、当社のエリアは夏の暑さが厳しいので、シンプルな技術で温度・湿度・通気をコントロールして夏涼しく過ごせるのはとても魅力的だった」と話す。実際に体験し、カネカSCが自社の差別化になると判断した中尾さんは、加盟を即決。同じくカネカが独自に開発した簡易全館空調「ベース空調システム」の採用も決めた。このほか、①お客様に説明しやすいシンプルかつ理に適った仕組みであること、②小屋裏を利用したり吹き抜けを十分確保できるなどプランニングの自由度が高く面白い空間づくりに挑戦できること、③技術的に難しい部分がなく施工やメンテナンスのハードルが低いことも決め手になったという。
男性の反応に変化
加盟後、すぐに建設に取りかかったカネカSCのモデルハウスは今年3月に完成。この6月から体験会を本格的に開催し始めたが、予約状況も来場者の反応も上々だという。「ベース空調」の快適性や、樹脂サッシの防音性を確かめてもらうなど説明・体感箇所が多く、その分滞在時間も伸びている。
「当初の予想通り、男性が強い関心を示してくれる。男性は外断熱・二重通気・高気密といったワードや技術への興味が高く、開口一番『外断熱や性能をベースにした家づくりを考えている』という話をしてくれる。ご夫婦だと、花粉症やアトピーなどの健康面の課題を住まいで解決したいという明確な意向を持っており、従来のようにデザインが好きな奥様の付き
添いで仕方なく来たといった感じのご主人がおらず、大きな変化と手応えを感じている」と中尾さん。
驚いたことに、スタッフの採用にも好影響が出ており、8月に入社予定の営業スタッフは、カネカSCのモデルハウスや、デザインと性能を両立する同社の強みに魅力を感じ、転職を決めたという。
また、昨年から独自の性能向上リノベーション事業「新築ヨミガエル」を展開し始めた同社だが、カネカSCのモデルハウスをリフォーム・リノベ顧客にも開放して提案に生かす取り組みを始めている。
特許技術、ブランド力を活用
中尾さんにカネカSCのメリットを聞いた。「一番大きいのは、住宅会社やFC本部が開発した技術ではなく、カネカという化学メーカーが開発した特許工法であり、非常に理に適った仕組みだということ。建物自体がシロアリや結露から守ってくれるため、5年に1度のシロアリ点検・駆除作業が不要になり、アフターメンテナンスがとても楽になるという話を自信を持ってすることができる。また、工務店としてはハウスメーカーに劣る部分はないつもりだが、お客様の受け取り方は違う。だから、カネカというグローバル企業のネームバリューとブランド力、技術を存分に使わせてもらうことで、自社の信頼・信用度を上げ、“ 性能に強い会社 ” だというイメージ付けができるのは非常にありがたい」。
そして、最後にこんな話もしてくれた。「私も同じ立場だからこそわかるが、多くの工務店は相当なコストをかけてコンサルを依頼したり、営業販売ツールを購入して集客増・受注増・利益増を目指しているにもかかわらず、多くの場合、成功というレベルまでいけない。それは、技術的な課題をクリアできていないからだと思う。表面的にうまくやれるものよりも、他社がやっていないことに挑戦しないと、すぐにマネされ、飽きられてしまう。その点、カネカSCにはほかにはない“ 通気 ” という要素があり、この技術こそ工務店の成功を支えてくれる」。
*カネカのお家、ソーラーサーキット、外断熱・二重通気工法は株式会社カネカの登録商標です。ベース空調は株式会社カネカソーラーサーキットのお家の登録商標です。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。