熊谷組(東京都新宿区)と住友林業(東京都千代田区)はこのほど、札幌市で地下1階地上10階建ての耐火木質ビル(仮称:KAGAプロジェクト)を着工したと発表した。2023年6月に竣工予定。
両社が立ち上げた中大規模木造建築ブランド「with TREE」による取り組みで、熊谷組・住友林業共同企業体での施工は今回が初。観光やビジネスの中心地である札幌市で行う同プロジェクトでは、木材活用による環境配慮に加え若者へのIT関連の支援等を通じ、街の新たなコミュニティ創出を目指す。
同ビルは、カフェや事務所、住居で構成され、上層階である7~10階には木質ハイブリッド集成材を使用。1時間耐火で大臣認定を取得(日本集成材工業協同組合)している「鉄骨内蔵型」の耐火集成材で、コスト削減と高い汎用性を実現する。木質ハイブリッド集成材の1時間耐火認定梁に、住友林業の梁貫通技術を加えて新規認定を共同取得した、1時間耐火構造の木質ハイブリッド集成材有孔梁も採用。梁に配管設備を貫通でき、貫通孔内部の不燃材が見えないため意匠性が向上するという。
柱と梁の被覆木材には北海道産のカラマツを採用。構造躯体に使用する木材は39.9m3、炭素固定量は31.8t(CO2ベース)で、同ビル計画地(139.05m2)の約7.2倍にあたる広さのカラマツの森が吸収するCO2量に相当するという。両社は、中大規模建築の木造化・木質化を通じて、国内林業を活性化し、脱炭素社会の実現に貢献するとしている。
「with TREE」は、顧客と共に(with)、コミュニティと共に(with)、木と共に(with)、高い価値と良い効果をもたらす木の建築物を協力して創りあげていくことを由来とする中大規模木造建築ブランド。「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトに2021年発足した。資材の調達から建築コンサルティングまで展開しており、都市の建築に「木」が生む新しい価値を提供し、中大規模建築の木造化・木質化を推進している。
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