厳しさを増す住宅市場で、自分らしく生き残ることを模索する2022年の「小さな工務店のためのブランディング講座」。今回のキーワードは「脱炭素」。脱炭素時代の家づくりをブランディングするヒントを解説します。昨今話題の「脱炭素」は、ブランディングのキーになるか、というお話です。
数値だけを売りにしない
実は、ここ数ヶ月の間に「脱炭素」をテーマにしたブランディングの講演依頼が3件ありました。依頼主としては「脱炭素社会になるから、性能の高さを売りにしないとダメ」と言って欲しかったのかもしれませんが、「数値」はひとつの判断基準にはなったとしても、それが最終的な決め手になることはありません。
例えば「ウチは他にない、全棟G3の住宅です」という工務店があったとします。「それなりの建築費が掛かりますが、それはランニングでペイできます」というのが売りだったとしたら、まわりに同じG3をクリアしてそこより安く建築してくれる工務店が出てきたらどうなるでしょうか?コストメリットだけを売りにしたら、イニシャルコストの安いほうが選ばれるのではないでしょうか?
数値だけを売りにすれば、間違いなく「比較対象」の土俵に乗ります。建材高騰のいま、少しでも建築コストは抑えたい状況ですから、性能だけを売りにするのはかなり危険なブランディングだといえます。
「上位等級の新設」が意味するもの
もうひとつ、性能だけを売りにしないほうがいい理由が、断熱や一次エネルギー消費量の新しい基準(等級)が生まれたことです。断熱は等級6(UA値0.46W/m2K、5・6地域)、等級7(UA値0.26W/m2K、同)が10月に新設されますし、一次エネルギー消費量では等級6(BEI0.8以下)は4月からスタートしました。この基準は、2050年のカーボンニュートラル化に向けたさまざまな事業(補助金)にも使われています。
となると、補助金を使った家づくりで営業するためにその基準をクリアするハウスメーカーやビルダーも増えてくるはずです。・・・・・
この記事は最新号『新建ハウジング6月20日号 12面』に掲載しています。
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