東海道五十三次の宿場町の面影を残す町並みや近江商人発祥の地と言われるエリアを商圏に含む滋賀県甲賀市のネヌケンは、工事費1500万~ 4000万円を超える古民家リノベーションを年間3~4棟、コンスタントに手掛けている。滋賀県産材を全面的に採用し、大工や左官など職人の技術を生かした家づくりを実践する同社の社長、根縫徹也さんは「豊かな暮らしと住まいの選択肢として古民家を求める人が増えている。そうしたニーズに応える形で古民家を次世代に継承しながら、地域の原風景を守っていきたい」と思いを語る。
古民家リノベに力を入れる理由について根縫さんは「ただ、地元への思いだけでやっているわけではない」とし、「地域の気候風土に適したデザイン・形状や建物に刻まれた歴史を生かしながら、現代の快適で健康な暮らしを可能にする性能を確保するためには高い技術力が必要で、ビジネスの視点でとらえると、リフォーム専業の事業者やハウスメーカーが入りにくい領域。ブランディングや経営を安定化させるという面でも(古民家リノベは)有効だ」と訴える。
同社では意図的に「古民家のリノベーションを得意とする工務店」を打ち出したブランディングやプロモーションを行っている。それにより「実は古民家だけではなく、実家を住み継いでいきたいという思い入れの強い人や、デザインや性能も含めて住宅に対する要求レベルの高い人など価値観のあう顧客層を選別して引きつける“入り口”になっている」と根縫さんは説明する。
子育て世帯の古民家 コンテストで大賞に
古民家リノベのメインターゲットは、リタイア後のセカンドライフや都市との二拠点居住を楽しみたいといった50~60代のシニア世代だが、最近では都市部からの移住者も含めて「自然に恵まれた環境で子育てをしたい」といった30~40代の顧客も増えているという。昨年、「いい住まい、いい暮らしを実現する住宅」の事例を競うLIXILメンバーズコンテストで大賞を受賞した「日野町の古民家」も30代の夫婦が3人の子どもと暮らす住まいとしてリノベーションした案件だ。
かつて施主の祖母が暮らしており、亡くなったあとは空き家になっていた築150年を超える石場建て・延べ床面積180m2を、1年掛かりでフルリノベした。建物をジャッキアップして腐朽した柱脚部を補強、壁の断熱はスケルトンにして全面的に施したり、既存部分の外側に付加断熱するなど場所に応じて対応。屋根については、・・・・
【残り2652文字、写真14点など】
この記事は最新号『新建ハウジング6月20日号 10面』に掲載しています。
7月26日、27日「リノベ工務店サミット」開催!ぜひご参加ください。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。