耐震等級3が当たり前の要求となり、快適性や寛ぎ感、「家事楽」など設計上の要求も増えた。耐震とプランを高い水準で整合させるには、耐震部材や工法の知識が不可欠。
設計・施工時の強い味方となる部材や工法の動向をまとめた。
※地盤編 ※基礎編 ※耐力面材編 ※耐力壁編 ※耐震フレーム編
制震部材① 壁量を確保しつつ大開口を実現
◉制震部材の概要は「アーキテクトビルダー6月号」116頁にまとめた。ここでは制震部材の課題と利点活用方法について補足する。制震部材は多くの製品が提案され、事例も増えた。とはいえ現状はオプション扱いの工務店がほとんどだ
◉普及のネックは導入コストが30万~40万円と高額なこと、建築基準法上は評価されておらず「余力」扱いであることだ
➡実際、品確法における耐震等級3の取得に制震部材を用いる必要はなく、耐力壁を増やして水平構面を強化すれば済む
◉もう1つのネックが実験データなどを性能値を公開していない製品が多いこと。制震部材の必要本数や配置などはメーカー側で計算して決めることが多い
➡現状で設計者は自分の設計した建物の安全性を確認するすべがない
◉2015年ごろに木造住宅など小規模建築向けの制震部材のガイドラインをつくる動きがあったが、いつの間にか立ち消えになっている
◉昨今は「国交省認定」を謳う製品が増えたが、それらは耐力壁として壁倍率の認定を取得したもの。制震効果について国などの評価を受けたわけではないことに留意する
制震部材② 材質や方式由来の弱点を補う対策を確認
◉耐震等級3を確保すれば、制震部材は不要かというと、それは別の話だ。耐震等級3は「震度6強~7レベルの1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しない」性能のこと
◉上記は震度6強~7レベルの1.5倍の力に対して損傷する可能性があることを示す。熊本地震のように大地震に繰り返し見舞われた場合、大きく損傷する可能性がある
◉地震時の揺れ方は地盤性状によっても変わる。粘土や砂が堆積した軟らかい地盤だと振動が増幅。建物の揺れは大きくなる
➡これらを勘案すると、大地震時に建物の損傷を軽微に抑えるには「耐震等級3+制震装置」の組み合わせが有効となる
◉「アーキテクトビルダー」6月号116頁以降でまとめたように、制震部材には材質や方式ごとに注意点がある。それらに対して有効な対策が取られているかどうかを確認する
➡材質や方式に由来する弱点を補う工夫がされている製品を選定することで、長期にわたり大地震時の効果を保ち続けることが可能になる
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