環境共生住宅の価値と魅力を伝えるには、多くのことを説明する必要がある。見込み客とどのように接することで、必要な情報を伝えて顧客を育てていくのか。
ここでは安成工務店(山口県下関市)東ブロック長・山口支店マネージャーの廣瀬宏幸氏、同東ブロックリーダー・アドバイザーの藤本久美子氏への取材をもとに同社の顧客対応とクロージング手法に迫る。
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顧客対応① 集客〜契約の流れ
◉ウェブマーケティングは一般的な取り組みはすべて実施。Instagramは5年前に開始。事例の写真が充実。豊富な事例写真を整理するためPinterestも活用。You Tubeも1年前から開始
➡ウェブから総合展示場のモデルハウス、各種イベントに誘導する
◉リアル営業では営業マンを置かずにチーム(支店)で対応。流れは以下の通り。起点は総合展示場のモデルハウス。ここでは営業せずに各種イベントや完成見学会に誘引することを徹底
◉個別に打ち合わせする前にイベントや見学会を通じて情報共有を深める。その後、打ち合わせを希望する見込み客には「安成工務店の全て」をもとに、担当者が家づくり全般について2時間掛けて説明する
➡営業マンがいないため、この段階で店長やデザイナーなどが見込み客の担当者となる
◉次のステップに進むのは建築申込み(10万円)の後。申込みをもらったら、ヒアリングを行って要望を聞き、プラン提案を行う。ここまで進むとほぼ100%契約に至る
◉上記の流れを徹底することを重視。いきなり打ち合わせを希望する見込み客に対しては「まずモデルハウスを見てほしい」と伝える。そこからイベントや見学会に誘導する
◉いたずらに提案を繰り返すのではなく、段階的に知ってほしい情報を見込み客に伝えて育成することに努めている。住宅のコンセプトが明快なので、考え方が共有されれば自然と契約に至る
➡ちなみに7、8年前まではモデルハウスで営業マンが見込み客に営業をする一般的なかたちを取っていた
顧客対応② アドバイザーの役割
◉ここから各段階のポイントを見ていく。前述のようにモデルハウスでは営業を行わず、来場者をイベントに誘うことに努める。その確率を高めるのがアドバイザーの女性スタッフ
➡山口支店の場合、2名のスタッフで運営している
◉アドバイザーの役割はモデルハウス来場者をイベントに誘引し、支店長などの営業担当者につなぐこと。直接的な営業は行わず、来場後のフォローを含めた情報提供に徹して「トスアップ」を増やす
◉確度の高い見込み客をイベントに誘引したときは店長やデザイナーがイベントに参加して顔をつなぐ。次の段階に進みたい見込み客は専門的な話を聞きたがるので早めに接点をもたせる
➡イベントで接点をもつことで店長やデザイナーは予備知識が得られ、親近感が湧く。その後の相談会にも力が入る
顧客対応③ モデルハウスでの応対
◉アドバイザーの仕事にはイベントの手伝いも含まれるが、展示場に常駐することを心掛ける。不在の時間が長いと、再訪者などの相談を受ける機会を逸して、気持ちが離れるこたがある
◉モデルハウスにおける応対は以下のようになる。まずは建物を案内。山口展示場は五感に訴えることを重視しているので、触れる、座る、眺める、風が抜けるなどを体験してもらう
➡来場者に自由に歩いてもらいながら、ポイントごとにさりげなく見どころを示唆する。たとえば下記のような流れだ
◉最初に庭を囲むリビングと和室部分に誘導する。そのエリアは濡れ縁が回っており、来場者が立ち止まりやすい。足を止めたら座るように促し、その場の雰囲気を味わってもらう
◉座った場所から目に入る庭や建物の要素について控え目に紹介し、来場者の興味を広げる。頃合いを見て室内に誘導し、興味のある場所について自由に見てもらう
➡見学を終えた後、ダイニングテーブルやソファに誘い、建物の感想などを訊ねつつイベントに誘導する・・・・・
【残り2385文字、図・表5点、写真20点ほか】
この記事の続きは、5月30日発行の『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー6月号(2022年5月30日発行)/超スマート経営』P.82~でご覧ください。
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