耐震等級3が当たり前の要求となり、快適性や寛ぎ感、「家事楽」など設計上の要求も増えた。耐震とプランを高い水準で整合させるには、耐震部材や工法の知識が不可欠。設計・施工時の強い味方となる部材や工法の動向をまとめた。
耐力壁① 小幅の耐力壁で広い間口を確保
◉耐力面材や筋交いのほかに個別に大臣認定などを取得したさまざまな耐力壁が提案されている。設計上、制約が多い場面に用いることで耐震性能をクリアできる
◉1つ目が小幅の耐力壁。開口部の大きな面に配置することで壁量を満たしたり、偏心率を抑える。特に間口の狭い建物にガレージを設ける場合などに有効
◉「タフボード」(ビスダックジャパン)は枠材と面材を組み合わせた真壁納まりの耐力壁。柱芯-芯350mm(全幅455mm)の仕様で壁倍率3.5倍の耐力。貫材や枠材を組み合わせることで面材単体よりも耐力が高まり、粘り強い
➡同製品は、柱と土台、梁の間にはめ込み、縦枠と上枠にN75、下枠にN90を所定の位置に打って取り付ける
◉「フロッキン狭小壁」(ダイドーハント)の1階用は耐力面材と柱脚金物などを組み合わせることで柱芯-芯350mm(全幅455mm)で壁倍率7倍相当の面内せん断耐力を得ている
➡2・3階用の製品は柱芯-芯350mm(全幅455mm)で7倍相当の面内せん断耐力を得ている(使用部位や柱長さにより異なる)
◉間口方向に配置することで門型フレームのような大開口を実現できる。このタイプの製品は開口フレームとは異なり、間口の片側だけでも使用できるのが利点
耐力壁② あらわしで用いて耐震性と開放性を両立
◉2つ目が抜けのある耐力壁。室内にあらわしで用いて耐力壁として機能させつつ、開放性も確保。格子状の素材を使ったものや丸鋼などの細い金属を使用したブレースが一般的だ
◉代表例が直径10mmステンレス鋼による「コボット」(コボット)。耐力壁のほか吹き抜けの水平構面の強化にも用いられる。あらわしとすることが多いので、白と黒に着色したタイプもある
耐力壁③ 施工性に配慮したリフォーム用工法
◉3つ目が耐震リフォーム用の耐力壁。天井や床を壊さずに室内側から耐力壁を付加できるように工夫されている
◉代表例が「かべつよし」(エイム)シリーズ。柱と梁、柱と土台の取り合いに金物を設置し、その金物に耐力面材を取り付けることで軸組と面材を一体化する
◉7~8倍相当の耐力を発揮。国土交通大臣認定や日本建築防災協会の技術評価を得ているので耐震改修に関する自治体の補助金の対象になる。複数の耐力面材を用いた仕様や真壁、大壁タイプなどを製品化している
➡同シリーズ以外のリフォーム向け工法としては、ダイライトを用いた「かべ大将」(大建工業)が知られている
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。