【全文公開】「超耐震」部材・工法の最新動向まとめ 耐力面材編
耐震等級3が当たり前の要求となり、快適性や寛ぎ感、「家事楽」など設計上の要求も増えた。耐震とプランを高い水準で整合させるには、耐震部材や工法の知識が不可欠。設計・施工時の強い味方となる部材や工法の動向をまとめた。
耐力面材① 木質系面材の入手難と価格上昇は続く
◉2022年1月からロシアは針葉樹丸太の輸出を禁止。さらに同年2月にロシアがウクライナを侵略したことから西側諸国や日本は経済制裁を実施。その対抗措置としてロシアは3月から合板用単板の輸出を禁止
➡ロシアからの合板用単板の輸入量は2021年で2565万7393m2。日本の単板輸入量の64%を占める
◉上記により面材耐力壁などに用いられている針葉樹合板が一気に不足。
入手難となり、価格も急上昇。この「合板ショック」を契機に面材耐力壁の仕様を見直す工務店が増加
◉木質系では「ハイベストウッド」(ノダ)などのMDFやパーティクルボードが候補になる。どちらも原材料の木質チップ不足、コンテナ不足による輸入品の遅滞から品薄感が強い
➡特にパーティクルボードは昨年秋ごろより品薄が続く。耐力面材だけでなく置き床用の製品も入手困難な状況
◉いずれの面材もハウスメーカーや大手ビルダーなど大口の顧客への供給を優先。一般流通は不安定な状況が続き、価格も上昇していく見込み
➡価格上昇は市況のほか木質チップや接着剤などの原材料の値上げ、燃料や電気代の高騰の影響も大きい
耐力面材② 原料調達しやすい無機系面材は供給が安定
◉供給面は火山性ガラス質複層板(ダイライト)や外壁用石膏ボード(タイガーEXハイパーなど)などの無機系ボードが安定。どちらも原材料はほぼ国内調達で安定供給が可能だ
◉価格面では火山性ガラス質複層板は木質系の耐力面材より高くなる。外壁用石膏ボードの価格は木質系の耐力面材と大差ないが、重量が909×3030mm判で20kg超と構造用合板より2割強重い
➡なおこれらの製品も燃料や電気代の高騰による値上げが予想される
◉なお、同じ無機系の面材でもモイスは多くの原料を海外から輸入している。現在、その一部の流通が滞っており、新規注文をストップしているのが現況だ
◉木質系の耐力面材は品薄が続くため、早めの発注と在庫が重要。調達を重視する場合、火山性ガラス質複層板や外壁用石膏ボードへの切り替えの検討も必要になる
耐力面材③ 水平構面を固める木質パネル
◉現在、問題になっているのが厚物針葉樹合板(ネダノン)24・28mmからの切り替えだ。これといった代替品がない。
そのなかで注目されるのが、スギ板12mm厚を3層に張り合わせた「Jパネル」(鳥取CLT)
◉針葉樹合板より1枚あたりの価格は高いが、フローリングなどの床仕上げを省くことが可能なので、使い方によってはコストダウンが可能だ。許容せん断力の試験データなども揃っている
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。