耐震等級3が当たり前の要求となり、快適性や寛ぎ感、「家事楽」など設計上の要求も増えた。耐震とプランを高い水準で整合させるには、耐震部材や工法の知識が不可欠。設計・施工時の強い味方となる部材や工法の動向をまとめた。
地盤① SDS試験で盛土を高精度で判定する
◉地震被害は建物の耐震性能のほか地盤性状でも変わる。同じ地震力でも岩盤層など固い地盤であれば揺れが小さい。逆に砂や粘土などの軟弱であれば揺れは大きくなる
◉地盤の地質構成のうち地震時に被害をもたらす危険性があるのは盛土。地震時に造成前の地盤(地山)と盛土の境界面で滑動崩落という地滑りが発生することがある
◉盛土の推定に有効なのがSDS試験(スクリュードライバーサウンディング試験)。SDS試験は2010年ごろに実用化された貫入試験の方法。従来のSWS試験機に計測項目を付加した試験装置を付加して調査(図1、図2:SDS試験の結果)
➡精度が高く、費用はSWS試験並みに安価。SWS試験と併用するかたちで地盤調査会社のジャパンホームシールドが実施している
◉SWS試験の測点数は25cm貫入するごとに1点。貫入深さと載荷荷重を計測。加えて貫入時の音で地質構成を推定。
SDS試験の測点数は25cmごとに1~7点。SWS試験の計測項目に加えて回転トルク、回転あたりの貫入量も計測。
深度ごとの地盤強度を把握できる(図2:SDS試験におけるトルクの計測)
➡併せて地形データや近隣ボーリングデータなどを参考にすることで地質構成が高精度で推定できる
◉地盤に貫入する際にロットに掛かるトルクを細かく記録できるので、盛土などの不均質な地質構成が判断しやすい。(図3)
SDS試験で盛土と推定された際には杭(補強材)を打つことで被害を軽微に留めることが可能になる
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地盤② SDS試験で液状化判定が可能
◉地震時による被害に液状化現象がある。東日本大震災では広い範囲で発生し、建物やインフラに大きな被害を与えた
◉液状化のリスクは土質と土の締まり具合、水位の高さで判定する。SWS試験では判定できない。最も確実なのがボーリング調査+土質試験だが価格が30万円以上と高額で判定に時間を要す
➡最も簡易な液状化リスクの調査方法は前述したSDS試験と水位測定を組み合わせて行うこと。(図4)費用はSWS試験にプラスα(従来の1/5)、納期は1/3で可能
◉判定結果により対策工法を選定する。液状化抑制する場合は高額になるが、CPD工法などを採用する。同工法は砕石を打ち込んで締固め、地盤の密度を増して液状化の発生を抑制する工法
地盤③ 液状化対策として有効な地盤改良工法
◉地盤改良工法には液状化対策となるものもある。その1つが「エコジオ工法」(尾鍋組)。杭の代わりに補強体として砕石を用いる。ケーシングで地面を掘削後、砕石を投入しつつトルクを掛けて締固めながらケーシングを引抜く(図5)
➡大地震時には隙間水圧が上昇するが、砕石の補強体は隙間から水を通して水圧を逃がし、液状化の影響を抑える
◉地盤の一部を砕石に置き換えることで建物荷重を砕石の補強体と地盤の双方で支える。補強体で受けた荷重は地中で分散するため補強体の設計長さは支持杭より短くなる。(図6)
◉この工法は地面にセメントなどを打ち込む必要がないのでCO2 発生量が低く、環境に負荷を与えない。更地にするときにコンクリートや鋼管杭のように撤去することが求められない。費用面でも利点がある
この記事は『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー5月号(2022年5月10日発行)超耐震 WEB限定特別付録』に掲載しています。
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