生活者にとっては嬉しい補助金や税制優遇制度だが、工務店にとっては登録や申請の手間が増える。補助金の代わりに値引きを選んでいた工務店もいるのではないだろうか。しかし、昨今の原価高騰は経営を圧迫するばかり。弁護士・秋野卓生さん(弁護士法人匠総合法律事務所 代表弁護士)は、工務店・生活者双方の利益のためにも補助金を利用しようと説く。一方でトラブルの原因にもなりかねないので、注意点も合わせて解説していただいた。
深刻な原価高騰 付加価値を戦略化しよう
原価高騰が深刻です。国土交通省も通達を出し、発注者は、価格転嫁に柔軟に応じるようにアナウンスを出しています。しかし、住宅業界における発注者は生活者です。生活者に対して、住宅会社は「原価高騰しているので、住宅価格が上がっているんです」という説明をせざるを得ないのが現状でしょう。
もはや「安っぽい家を高く売る」という戦略は成り立ちません。従って「原価高騰により高額になってしまった住宅」に、より高い付加価値を付けて提供することが、ますます大事になってきます。
補助金の有効活用は工務店・生活者双方に利益
今、省エネ住宅を中心として、多くの補助金があります。そもそも補助金を交付する趣旨は、例えば「省エネ住宅の建築を促進したい」と国が考えたとして、より多くの省エネ住宅を建築してもらうため、省エネ住宅を建築する際に増えたコストを、補助金として交付するのです。要は省エネ住宅を「たくさん建てて欲しい」と考えて実行している、というわけです。
つまり「補助金の対象要件に沿う住宅を建築していく」という行為は、住宅会社にとっては「次世代のスタンダードとなる住宅の建築」を実行していることになります。補助金の活用には、次の時代にスマートについて行くことができる、というメリットもあるのです。
そして、何よりも今、住宅価格が高騰していく中で、施主に数十万円、中には100万円を超えるお金を支給してくれる制度ですから、施主にとってもたいへんありがたい制度と言うべきでしょう。
交付対象外の可能性を踏まえ確認書を交わそう
補助金を利用する際には、補助金の交付要件を満たさなければなりません。この補助金交付要件を満たさなかったために、結果として補助金が交付されず、施主から補助金額相当の補填を求められてしまうと、当然住宅会社の利益は補助金の補填額分減ってしまいますので、大きなリスクもあるのです。
もっとも、住宅会社の責めに帰すべき事由がないのに補助金が支給されないケースもあります。例えば、その補助金が非常に人気が高く、補助金の予算額を超える申請があり、公募締め切り前に受付が終了してしまった場合は、補助金は支給されません。・・・・
続きは、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー最新号(2022年6月号)/超スマート経営』(2022年5月30日発行)P.10~に掲載しています。
記事の続きでは、補助金活用時に施主と交わす「確認書」の書式がダウンロードできます。
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