東京都防災会議は5月25日、東日本大震災を踏まえ策定した「首都直下地震等による東京の被害想定」と「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定」を10年ぶりに見直し、都心南部を震源とするマグニチュード(M)7・3、最大震度7の「都心南部直下地震」が起きた場合、揺れや火災により都内で最大6148人が死亡し、約19万4431棟の建物被害が出る推測を発表した。
東京の地下はさまざまなプレートが沈み込む複雑な構造になっており、新たな被害想定では発生確率などを踏まえ、数種類の地震を仮定。最も大きな被害となるのが「都心南部直下地震」。30年以内に70%の確率で発生するとされ、震度6強以上の地域が区部の約6割となり、阪神淡路大震災と同規模の6000人以上の死者が出るほか、負傷者は9万3435人。避難者はおよそ299万人にのぼり、帰宅困難者はおよそ453万人と想定されている。
「都心南部直下地震」と同様の確率で起こる可能性がある「多摩東部直下地震」ではM7・3で、震度6強以上の範囲が多摩地域の約2割に広がり、死者は4986人、建物被害は16万1516棟に広がると推計。M9の「南海トラフ巨大地震」があった場合、揺れによる被害はほぼ発生しないものの、津波が起き、23区の沿岸部では2〜2.6メートル、島しょ部の式根島では最大約28メートルが観測されると予測している。
報告では防災・減災対策による被害軽減効果にも言及しており、耐震化の推進により死者・全壊棟数は10年前の前回想定から3〜4割減少している。
また家具転倒防止対策の実施率の向上によってこれが原因の死者数が1割減少。さらに電気を要因とする出火の低減、初期消火率の向上などで死者・焼失棟数は3〜4割減少した。いずれにしてもさらなる各種の対策によって被害を大幅に減らすことが可能としている。
地震発生後の身の回りで起こり得る災害シナリオと被害の様相も記載されており、地震発生直後のインフラ、ライフラインの混乱はもちろん、復旧まで長期化した場合の生活環境への支障や避難生活のストレスや高齢者や既往症を持つ人の震災関連死も指摘している。
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