近所に住む建て主から依頼された新築工事でのこと。建築家が吹き抜けの上部に大きなフィックス窓を造作で付けたいという。見積もり金額が折り合わないため、その窓だけ、建築家が連れてきた業者で設置することに。ところが引き渡し後にひどい結露が発生。建て主は「おおごとにしたくない」と言うが…。 【住宅ライター:渡辺圭彦】
それは引き渡し後、1週間も経たない頃のことだった。工務店の社長N氏が現場から戻って夕食の卓につこうとしたとき、建て主から電話がかかってきた。「例の吹き抜けの窓、結露が止まらないんですよ…」。怒りというより困惑に包まれた小さな声だった。
建築家と意思疎通できず綱渡りの施工現場
思えば建築中から不穏な気配の漂う現場だった。建て主は工務店の近所に住んでいたこともあり、N氏とは町内会で顔見知りに。「昨年、父が亡くなったので実家を建て替えたい」のだと言う。設計は建て主の知人である建築家に依頼しているとのこと。「これも地域の縁」と思ったN氏は、新築受注がほしいタイミングだったこともあり、快諾した。
しかし、その建築家は公共建築やビルの仕事が中心で、住宅の経験がほとんどないという。「実際、木造については明らかによくわかっていなかったですね。細かい納まりには関心がなくてこちら任せ。それでいて、自分のデザインには自信があるから、柱や手すりをやたら細くしたがったり。話がかみ合わなかったですね」。
打ち合わせの席でN氏が異議を唱えると、決まって建て主が間に入ってとりなした。その場はおさまるものの、結局、問題は解消されないまま…
この記事は『新建ハウジング2022年5月20日号6面』に掲載しています。
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