耐力壁③ 重心と剛心はなるべく近づける
◉建物荷重の中心である重心と建物が地震などの水平力に抵抗する力の中心である剛心のあり方で耐震性能が変わってくる。地震力は建物の重心に作用する。一方で建物は剛心を中心に地震力に抵抗しようとする
◉重心から剛心が離れていると、建物を捻ろうとする大きな力が発生し、局部的な破壊が起こりやすくなる。重心と剛心の離れ方を偏心率と言う概念で表す
➡偏心率が大きいほど前述した建物を捻(ねじ)ろうとする力が働き、搖れが大きくなる。地震時に被害が発生しやすくなる[下図]
◉重心と剛心が一致している(偏心率0)場合、耐力壁に掛かる力は均等であり、重心を中心に建物の外周が均等に揺れる。そのため重心と剛心はなるべく近いほうが地震に強い建物になる
➡重心と剛心の距離を「偏心率」という概念で表す。偏心率は重心と剛心の距離が離れるほど大きくなる[下図]
◉建築基準法では偏心率0.3以下と定めている。耐震性能を考えるとさらに小さい0.15以下が望ましいとされる。許容応力度計算法では偏心率0.15を超える場合、ねじれ補正係数を掛けて壁量を割増する[下図]
耐力壁④ 耐力面材にはさまざまな仕様がある
◉最近は建物の外周に構造用合板をはじめとする耐力面材を用いるケースが一般化した。面材で外周部を覆うことで気密性能が保持しやすくなるなど、耐震以外の面でも利点がある
◉さまざまな壁倍率の製品や仕様があるので、設計に合わせて選定する。壁倍率以外にも価格や重さ(施工性)、防火性、耐水性、防蟻性、透湿性など製品ごとに特徴がある
◉個別認定を取得している仕様はN50以外の釘が使われたり、釘間隔が@150mmより詰まるように規定している場合もある。標準仕様以外の耐力面材を用いる場合は注意が必要
➡図面上で分かりやすく注意喚起しつつ、施工前に大工に対して釘の仕様などについて口頭で伝えておくことも大事だ
耐力壁⑤ 耐震性能を左右する施工管理
◉面材耐力壁の耐震性能の保持には釘に関する施工管理が重要。釘の打ち方(めり込みすぎなど)に問題がある現場もまだある。また釘の打ち忘れ箇所が生じることも珍しくない
➡釘打ち機の連結釘が切れたなど作業を止めたときに打ち忘れが生じやすい
◉間柱に対して釘を打ち損じる場合がある。打った瞬間に大工は分かるのでその近くにもう1本打ってもらう。繊維系の充填断熱の場合、間柱を外した釘が熱橋になるので抜くようにする
◉面材耐力壁の施工から透湿防水シートを躯体に巻くまでは時間の余裕がない。巻いてしまうと釘の施工状況は確認できなくなる。大工と緊密に連絡を取って進捗状況を把握しておく
【残り10175文字、図面など20点、図・表20点、写真25点ほか多数】
この記事は、5月10日発行の『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー最新号(2022年5月号)/超耐震 技術解説』P.32~に掲載しています。
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