「工務店カンファレンス2022」(4月19日オンライン)では、ローカルSDGsを指向する環境メディア「ソトコト」編集長の指出一正さんを招き、「Z世代が志向する未来×地域工務店の役割」をテーマに話を聞いた。内容を抜粋して紹介する。聞き手は新建新聞社社長・三浦祐成。
顧客層の変化
「ソトコト」は、1999年に創刊した、未来を考えるSDGsマガジン。隔月誌とWebサイトで提供している。それまで「LOHAS」などをキーワードに「世界と私」という視点から環境配慮型のライフスタイルを志向する生活者向けに情報発信してきたが、2011年東日本大震災をきっかけに、「自分と自分の大切な家族や仲間」という視点を重視する、ソーシャル&エコマガジンに変えた。読者層は20代〜30代。社会起業家、ソーシャルグッド・ローカルグッドを志向する層が読んでくれている。
この十数年で生活者の意識に大きな変化があった。日本でもとくにZ世代(1990年中盤から2010年序盤に生まれた世代)を中心に、彼らはもうこれ以上社会、世界、地球に迷惑をかけたくないという感覚で暮らしている。また彼らは自身の暮らしや消費を社会の最適解で考える「ソーシャルネイティブ」の感覚が根付いている。「エシカル」「アップサイクル」「サーキュラー・エコノミー」といった行動論理をもっている。我々のようなバブル前後世代ではあらゆる分野に一番があり、社会全体がそれに向かって競争をしていた。一方若いZ世代は「一番」のない、多様性や寛容性のある社会を生きている。こうした意識の変化が、今後日本全体の消費行動や暮らしの変化にも如実に反映されていくだろう。
地域企業が求められる時代
実はこうした「社会の気分」の変化は、工務店さんを含め地域に根付く「○○屋さん」にはチャンスだと思う。昨今のクラウドファンディングの盛り上がりは、まさにそのことを証明している。
1輪の花を安いからと通販で買うのではなく、近隣や知り合いの花屋さんにいって会話も含めておすすめのものを買う。こうしたお店が近くにあることの豊かさに気づき始めている。
つくり手にとっても、金額ではない、関係をどう発露していくかが大事になってくる。いま農業で生産者と消費者が直接繋がり、生産者が過程を開示することで、スーパーより高くても消費者が納得して購入してもらえる関係ができている。だが一般的に販売されているほとんどの商品は、そうした情報が省かれ、価格だけで判断するしかない。そこをもっとプロセス重視の消費行動に切り替えることができれば、そこを起点に購買行動が変わっていく。
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