富士経済(東京都中央区)はこのほど、EV・PHV向け充電インフラについて、日本や中国、米国など主要17カ国の市場を調査した結果を「EV/PHEV充電インフラの国別整備実態と普及計画 2022」にまとめ、発表した。
日本はEV・PHVともに新車販売台数が伸び悩んでおり、2021年の普通充電器はコネクター数(個)ベースで6.6%増の2万9685個、急速充電器は3.4%増の8105個だった。一方、2030年までに普通充電器12万台、急速充電器3万台を設置するという国家指針や、日本充電サービスから事業を継承したe-Mobility Power(eMP)による外資企業との協業など、充電インフラ整備の動きがみられる。2021年末には、eMPと連携して日本市場での本格展開を進めているスイスの急速充電器メーカーABBが、普通充電器の展開を開始すると表明するなど、今後急速に設置が進むことが期待される。2035年の普通充電器は2021年比2.6倍の7万6770個、急速充電器は3.0倍の2万4060個、ワイヤレス給電は26万5000台を見込む。
中国では、2021年に普通充電器が58.6%増、急速充電器が33.1%増となり、普及台数は併せて130万個強となった。しかし、EVの新車販売台数が約300万台、EV・PHVの普及台数が800万台に近づいたことで、高速道路沿いを中心に充電渋滞が深刻化。北京や上海、広州など地方自治体による充電ステーション新規開設が急速に進展し、2021年末までにオフィス・公的機関を中心に5万500カ所に拡大した。2035年の普通充電器は2021年比20.5倍の2191万個と予測。
急速充電器は、国家規格のGB/T以外では、TeslaのSupercharger7000個弱を設置。2030年前後には、CHAdeMOと連携した新急速充電規格「ChaoJi」の普及が急速に進み、急速充電器の設置数は100万個を超えるとみられる。ワイヤレス給電は、2020年にGB基準のワイヤレス給電システムの国家規格が公開され、今後中国国内でさらに普及していくとみられる。
米国では、2021年のEV・PHVの新車販売台数が前年より増加。普通充電器は18.2%増で新たに1万個以上設置、急速充電器は20.9%増でCCS(Combo1)やSuperchargerを中心に約4000個が新たに設置された。充電ステーションは年末までに2万8360カ所になった。急速充電器は、ほとんどの日系自動車メーカーがEVのインレット(充電口)をCCS(Combo1)とする方針であることに加え、VWグループのElectrify Americaが今後の新規設置機からCHAdeMOコネクターを除外することから、CHAdeMOの設置数の増加は見込めないとしている。ワイヤレス給電は、EVバス向けとニューヨーク州で後付けタイプ製品の設置数が継続的に増加。2021年の2900台から、2035年には115万台に増加すると予測している。
英国では、V2G実用化に向けた実証事業を国家プロジェクトとして大規模に展開。自動車メーカーや充電器メーカー、ソフトウエアベンダーやエネルギー事業者が注目するマーケットとなっている。充電ステーションは、コロナ禍においてもエネルギー大手のBPグループが推進する自社系列ガソリンスタンドへの充電器設置などを中心に拡大。2021年末には前年から1000カ所弱増加し、6600カ所となった。2035年には、普通充電器が2021年比3.2倍の5万5110個、急速充電器が同3.5倍の1万8400個を見込む。
同調査は、主要17カ国(欧州8カ国、北米2カ国、アジア3カ国、ASEAN3カ国、オセアニア1カ国)を対象に実施。充電インフラ(普通充電器、急速充電器、ワイヤレス給電)の普及動向を把握するとともに、長期予測を行った。
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