工学院大学(東京都新宿区)の建築学部生によるグループ「WA-K.pro」(ワークプロ)が設計し、伝統工法と地元産材で建てた八王子キャンパス内のテニスコート用レストハウスがこのほど完成した。
建築学部の1、2年生を中心としたWA-K.pro「K×Kプロジェクト」では、同キャンパス内に点在する老朽化した倉庫を地元多摩産の木材を使用した木造建築に建て替える活動を続けており、今回のレストハウスは4棟目となる。同プロジェクトではこれまで、構内で木材を運んで組み上げたり、土壁の材料となる土を練るなどの作業も行っていたが、今回はコロナ禍のため、学生たちは基本設計と模型作りを通して、追掛大栓継ぎ、竿車知継ぎ、鎌継ぎをはじめとする伝統的な木造建築工法を学んだ。
また、1月には東京都檜原村で林業と製材所の現場も見学。手入れの行き届いた人工林と、大学構内で木材がレストハウスとして組みあがる過程を実際に見ながら、林業における人手不足や廉価な輸入木材の存在、輸送におけるガソリン値上がりの影響など、さまざまな問題も体感した。同大学は、プロジェクトを通して社会的課題に応える人材育成を目指すとしている。
基本設計は1、2年生が担当し、地元企業が多摩産木材の調達と伝統的な木造建築工法の指導を行った。壁面を極力減らしてシンプルな形状にまとめ、建築面積を増やすことで通気性と日陰を確保。広い休憩スペースからコート内が確認できるほか、南側にルーバーを設けることで直達日射を抑制。通風を確保しながら道路からの視線もカットした。倉庫部分は、左右横開き扉にして間口を広げ、用具の出し入れをしやすくして利便性を向上させた。
同大学では、2016年に結設計室(東京都八王子市)、東京チェンソーズ(東京都西多摩郡)と10年間の木材購入協定を締結。3者は同活動によって、木材や林業に関心を持つ人材を増やし、地元材使用の促進と関連する社会問題の解決を目指す。今後も地元多摩産の木材を構内で継続的に使用し、地産地消のものづくりと、長期的なスパンで近隣企業との産学連携を図るとしている。
今回のレストハウス施工では、吉匠建築工藝(東京都八王子市)が伝統的木造建築の工法を指導、東京チェンソーズが木材の調達と林業見学会での会場提供・説明を実施。結設計室が設計指導と上記企業との連携を担当した。
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