今どきの住宅は壁量計算には不向き
◉壁量計算は平屋と総2階建て以外の建物を想定できていない。たとえば下屋があり、1階に広い部屋を配置するプランは想定していない。今どきの開放性の高いプランは壁量計算には不向きだ
◉上記のようなプランの場合、2階耐力壁の直下に耐力壁を設けたり、2階床の剛性を高めて下屋の天井面まで伸ばす必要があるが、壁量計算ではこうした検討は行われない
◉同様に店舗などの商業用途の建物も壁量計算だけでは危うい。住宅と比べて滞在人数が多く、積載荷重が重くなるためだ。壁量計算にはこのような実情をふまえた規定は定められていない
◉また在来工法の壁量計算には積雪への配慮がない。後から法に規定された枠組壁工法では建築基準法に基づく告示1540号で積雪量により必要な壁量を変えている
➡同告示では積雪2mの場合、2階建てで2倍弱、平屋だと4倍弱の壁量を必要としている
◉在来工法の一般地域における壁量は枠組壁工法と同じなので、積雪地においても本来は同じ壁量が必要になる。多雪地において壁量計算だけで耐震性能を確認するのは危険性が高い
◉上記をふまえると壁量計算は平屋で屋根が軽い建物など、適用して問題ない建物に限って用いるべきだろう。それ以外の建物については許容応⼒度設計法(グレー本)などによる構造設計を行うことが望ましい
耐震等級3を標準にすべき理由
◉熊本地震においては震度7クラスの大地震が短期間で繰り返し発生した。それにより耐震等級1の1.25倍の性能をもつ耐震等級2の建物も一部が倒壊した
➡一方で耐震等級1の1.5倍の性能をもつ耐震等級3の建物は倒壊には至らなかった
◉この大地震以降、耐震性能を考える際には繰り返しの大地震を前提とする必要性が明確となり、新築時には耐震等級3を目安にすることが実務者の常識となりつつある・・・・・
【残り5255文字、図面など10点、図・表18点、写真10点ほか】
この記事は、『新建ハウジング別冊・月刊アーキテクトビルダー最新号(2022年5月号)/超耐震 技術解説』(2022年5月10日発行)P.16~に掲載しています。
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