広島大学大学院先進理工系科学研究科の鍋島国彦助教と中村尚弘教授、同大学元学生の上坂卓也氏(現関西電力)、竹中工務店技術研究所の鈴木琢也主席研究員らによる研究グループはこのほど、 建物に加速度センサーを設置し、計測された揺れから、実建物の振動特性を表すモデルを高精度に推定する方法を提案した。これまでの研究の多くは建物が弾性範囲に収まる比較的小さな地震が主な対象だったが、この研究では、大地震で建物が大きく損傷するレベルのモデルを作成することを初めて可能にしたとしている。
建物に設置したセンサーで計測された揺れから建物振動モデルを構築するための基盤技術「逆解析法」について、同研究グループの鈴木氏が開発したモーダル反復誤差修正法を用いた。これまでの逆解析法による建物振動モデルの推定は、非常に限定された条件での研究で、特に大地震レベルのモデル推定は非常に困難になるため、研究対象としてほとんど扱われてこなかったという。
一方、モーダル反復誤差修正法では、効率的な調整が行えることから、大地震レベルを視野に入れた建物振動モデルの推定を試行。E-ディフェンスで実施された実大振動台実験のデータをもとに、建物に設置された加速度計の計測データから、大地震時を視野に入れた建物振動モデルを高精度に推定する方法を提案した。「将来的には、地震被災後における建物の損傷検知や、今後起こり得る地震に対する応答予測などへの展開が期待」されるとし、今後は地震被災後における建物の損傷評価法の構築などを目指すとしている。
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