資材ショックにより、深刻化する原価高騰。弁護士・秋野卓生さんが、昨年、ウッドショック対策として作成した合意書をバージョンアップ。昨今の情勢を踏まえた解説と合わせて公開します。
1.ウッドショック対策の合意書
昨年、ウッドショックが深刻化しはじめたころ、ウッドショック対策の合意書を作成し、多くの住宅業者の皆様に使っていただきました。
しかし「乙は、対象事象(ウッドショック)により、請負代金が適当でないと認められるときは、甲に対して、請負代金の変更を求めることができる」と合意書に記載していたとしても、最終金清算時に請負代金の増額に応じてもらえた住宅会社は、実際には少数だった模様です。
そして、今、ウクライナ情勢などもあって、原価高騰はあらゆる建材に生じています。契約時に確認した実行原価の金額と契約後、しばらく時間が経過してから発生する工事原価が食い違う事態は、住宅会社の資金繰りにも影響を及ぼす重大な事態であり、何とか対策を考えていかなければなりません。
今回、昨年の反省も踏まえ、原価高騰対策の合意書をバージョンアップしました。
2.予備費を計上しておく
予備費とは、使うかもしれないし、使わないかもしれない予算を見積もって、余分に計上しておく金銭です。
原価がどのぐらい高騰するか不明な今、この予備費を計上し、原価が高騰したら予備費から充当し、余ったら施主に返金するという手法を検討していきたいところです。
もっとも、これまでも住宅の新築工事やリフォーム工事の見積書に記載されることのあった予備費ですが、請負契約締結時には、「値引き」がつきものである業界慣行がある現状において、他の見積もり項目で値引きをし、予備費を維持することは難しいかもしれません。
3.補助金を予備費として計上する
原価高騰の著しい今、「安い家を高く売る」という営業戦略はとりあえずやめ、「施主に納得感のある高品質の家を高く売る」という戦略を検討していただきたいところです。
この高品質な住宅について、今年も沢山の補助金が準備されています。
住宅会社の中には、補助金申請が面倒だといって敬遠してきた会社もあるかもしれませんが、建築予算にオンできる補助金は、例年に増してありがたい存在になっていると思います。
私からの提案は、この補助金で出ることになる金額全額について予備費として計上し、原価高騰して請負代金が増額となった場合には、この補助金相当額から増額分を充当する、という合意書を施主と交わしたらどうか、というものです。
補助金の中には、住宅会社が代理受領できるものもあります。住宅会社が代理受領した補助金から原価高騰による増額分を充当し、残金があれば施主に返金するという合意書を取り交わすことによって、原価高騰対策にならないかと考えています。
※合意書の書式は次ページでダウンロードできます。
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