「強い危機感がある。いますぐ変えなければ、この先の市場で生き残っていけない」。
そう話すのは新潟県内で年間約50棟の新築住宅を手がけるユースフルハウス(新潟市)社長の難波正則さんと専務の中村佐知子さんだ。
資材ショックや土地価格の上昇などの影響で住宅が高額化していることにより、自社がこれまでメインターゲットとしてきた20~40代・子育て世帯が、ローコストビルダーが供給する建売・分譲住宅へ流れているという。これを受け同社では、性能を大幅に向上させた、いわゆる“富裕層”をターゲットにする3000万円以上の高価格帯の住宅と、コンパクト化×規格化により高い性能を備えながらも価格をこれまで提供してきた2400万円程度に抑えた住宅の2つの軸で展開していきたい考えだ。
同社は難波さんと中村さんが2人で起業して10年目。これまで“営業力”を武器に実績を伸ばしてきた。デザイン性の高さを売りに、性能はUA値が0.4W/m2K台程度で、それを32~33坪・2200~2400万円の価格帯で提供。県内の20~40代・子育て世帯の一次取得層に人気のブランドを築いた。
しかし、ウッドショックに端を発し、あらゆる建材の価格が高騰する資材ショック、そこに土地価格が上昇する状況が相まって、同社を取り巻く市場環境は急変しているという。中村さんは、自社がメイン商圏とする新潟市内で土地価格が上昇している背景に、「ハウスメーカーや分譲系の大手ビルダー、ローコストの建売ビルダーらによる土地の買い占めがある」とみる。
難波さんは「いま新潟市内で土地と建物をあわせて取得しようとすると予算は4000万円オーバーになってしまう。数年前は3000万円で手に入れることができた」と指摘。中村さんは「新潟県は全国でも平均所得が高い地域ではない。住宅の取得価格の上昇を受け、当社のメインの顧客層が安い建売住宅に流れている」と説明する。
集客は半分程度 本気でスピーディーに変える
そうした厳しい市況は、集客にも影響を及ぼしている。難波さんは「今年に入って感覚的には集客が半分ぐらいに落ち込んでいるのでは」とする。中村さんは「住宅の価格上昇を受け、メイン顧客層のなかで、『家を建てよう』という人自体が減っているようにも感じている」と話す。
そこで同社は、経済情勢などに取得意欲・計画が影響を受けにくい、デザイン・性能など全てにこだわる所得の高い富裕層を新たなターゲットとして設定しつつ、これまでのメイン顧客層にはコンパクトサイズの住宅を規格化することで価格を抑えて提供していく2軸の戦略をとる方針を固めた。
難波さんは「本気で変えなければ。しかも、スピード感を持って変える必要がある」と力を込める。そのための重点施策として、自社の家づくりに「大型パネル」を導入し、標準的に採用していく考えだ。
サトウ工務店・佐藤さんに2年間の技術コンサル依頼
短期間で生産体制を変革しながら、同時に住宅の性能向上と品質確保を初期段階から確実に実行するために、大型パネルを用いた家づくりのパイオニア的存在として知られ、県内でハイデザイン・ハイクオリティの家づくりで実績を重ねるサトウ工務店(三条市)社長の佐藤高志さんに技術面のコンサルティングを・・・・
【残り2319文字、写真・パースなど10点ほか】
⇒ 続きは、最新号・新建ハウジング2022年5月10日号3~4面に掲載しています。
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