長年にわたって、社員大工育成の取り組みを続けている会津建設(福島市、芳賀一夫社長)は、入社間もない若手大工に本格的な現場の経験を積ませる取り組みを始めた。早い段階で、大工の仕事のやりがいや醍醐味(だいごみ)を体感させることで、若手のモチベーションを高め、技能習得やキャリアアップへの意欲を引き出し、育成のスピードを速める狙いだ。大工不足、とりわけ若年層の担い手不足が顕著な状況で、社長の芳賀さんは「今の時代の若者に合った育成方法」により、自社の家づくりの武器となり、経営を支える財産となる大工を大切に育てていく考えだ。
〈※掲載情報は2020年取材時のものです〉
墨付けから仕上げまで若手だけで
同社がスタートした大工育成プロジェクトは、入社5年未満の若手大工だけで実際に顧客に引き渡す住宅を建てるというもの。このほど1棟目の工事が始まり、1月24、25日の2日間で上棟を行った。若手に自らの技能で現場を進めていく経験を積ませることにより、技能向上のスピードを上げ、早期の戦力化を図る。
今回の現場を担当する若手大工は11人。そのうち3人は、昨年4月に入社した新人だ。同社は、大工が墨付けした材を社内の設備でプレカットしているが、今回も手順は同じ。手板を描いて墨付けする段階から、同若手11人だけで作業している。現場監督も大工と同世代の、入社5年目の若手を配属した。
指導員としてベテランの大工2人がつくものの、作業には加わらない。若手大工の作業を確認し、必要に応じて修正などを指示するだけにとどめている。
11人で作業するのは上棟までで、その後は入社5年目の3人と、1年目の3人が現場に入る。5年目の大工については、大工技能がどれだけ身についたかを見る。一方、1年目の大工には、先輩の働く姿を見せるのも狙いの一つ。「いずれ先輩のありがたみを感じるようになってくれればうれしい」と芳賀さんは話す。
“本番”を通じて自主性養う
会津建設の大工育成プログラムでは通常、1年目は親方について、社内で大工技能の訓練を行う。1年目の終わりごろから徐々に現場に出始め、2年目以降は本格的に現場でのOJTに入る。今回、実際の現場に携わっている1年目の3人は、本来ならばまだ現場で本格的な作業に関わることはない段階だ。
しかし、社長の芳賀一夫さんは「大工の仕事は“本番”を経験しないと覚えない」と、現場での経験が何よりも重要だと説く。ただ、一般的には、たとえ現場に出たとしても、親方の指導を受けながら働くことになるため、「つい親方に頼りがちになり、“指示待ち”になる」傾向があるという。そうした課題の解消につなげ、若手が戦力となるまでの時間を短縮し、自主性を身につけさせるために、若手だけで実際の現場を手がける育成プロジェクトを考案した。・・・・・
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⇒ 続きは、新建ハウジング2020年2月10日号1~2面に掲載しています。
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