福島市の菊田工務店は、2020年の完工5棟に対し、今年はすでに7棟を受注。3月上旬ですでに今年いっぱいの着工が埋まっており、春以降の契約は来年以降の着工となるほどの好調ぶりだ。その秘訣は同じ商圏の他社とは一線を画す「パッシブハウス」レベルを実現する断熱・気密の施工技術だ。「自分が住む家と同じように施主の家をつくる」をモットーに、若手3兄弟が主導して地元の支持を集めている。
〈※掲載情報は2021年取材時のものです〉
衝撃の出会い
同社は1968年、福島市で創業。現代表の菊田良一さんが2代目になる。新築・リフォームや、民間の土木基礎工事なども請け負う会社だった。経営方針を転換したのは8年前の2013年。きっかけをつくったのは、良一さんの長男で、現在専務の良将(りょうへい)さんだ。当時の良将さんは、2010年に二級建築士に合格した後、大工仕事や土木工事を担当していた。資格を取得したものの「重機に乗って土木運搬の仕事をしていた方が好きなくらい」と、内心では住宅設計の仕事に携わることに迷いすら感じていた。
そんな良将さんが偶然見つけたのが「省エネ建築診断士」の資格講習会。パッシブハウス・ジャパンがドイツ発祥のパッシブハウスの啓蒙のために、その定量設計手法を学ぶ資格講習として開講していたものだ。
福島から車で約2時間。講習会は、山形市にある東北芸術工科大学を会場に1泊2日で開催された。良将さんは、初めて森みわさん、松尾和也さんらの講義を受け、世界標準の温熱性能を備えるパッシブハウスの存在を知った。「断熱性の低い住宅」として、自分たちが普段つくっている住宅が紹介されていることに衝撃を受けた。
また講習では、パッシブハウスレベルのモデルハウスも初めて実体験し、「外の肌寒さと対照的な室内の温もりが身に染みて分かった。このセミナーが自分にとって運命的な出会いになった」と良将さんは当時を振り返る。
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