銀行からの融資金額が想定より低くなってしまったため、大幅な予算調整が必要に。そこで、大工に事情を話して複雑な造作も含めて請けてもらえるように協力を求めた。しかし、実は建て主は大工の知人でもあった。話を聞いた建て主から「なぜ個人的な事情を漏らしたんだ」と怒られるはめになってしまった。 【住宅ライター:渡辺圭彦】
「私の不注意であることは間違いありません。大工にもプライバシーの部分を他言しないように伝えておくべきだった」と悔やむのは、工務店社長のIさん。
祖父が創業して以来、地域の新築、リフォームの需要に幅広く対応しており、紹介受注も多い。今回、トラブルとなった建て主もOB顧客からの紹介だった。
当初は、スムーズに打ち合わせが進み、プランもまとまりかけていたのだが、あてにしていた両親からの援助が難しいということが判明。自己資金だけではとうてい新築費用はまかなえないため、慌てて銀行に住宅ローンの相談をしたものの、希望する額からは大幅に低くなるとの回答が返ってきた。
コストダウンのために大工に事情を話したが…
Iさんと建て主はやむなくプランをいちから見直すことに。全体的に床面積を減らし、設備機器や仕上げ材のグレードをランクダウン。
「それでもあまり安っぽく見えないように、すっきりとした印象になる納まりを要所で考えました」とIさん。そのためには、いつもより施工にもひと手間かけて、なおかつ無駄が生じないように効率よく工程を進めていかなくてはならない。
そこでIさんは数年前から付き合い始めた大工に相談。若手だが腕もよく、何よりも住む人のために役に立ちたいという姿勢があり、エース格として頼りにしている存在だ。
「少々、複雑な造作なども込みで請けてもらえないだろうか。実は、かくかくしかじかで困っているんだ」と事情を話したところ、「ああ、この人なら私の中学のときの先輩ですよ。部活でお世話になった人だからぜひやらせてください」と快諾。
「知り合いだったのか。それなら話が早い」とIさんもほっと胸をなでおろしたのだが、思ってもみない展開が待っていた…
この記事は最新号『新建ハウジング4月20日号9面』に掲載しています。
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