持続可能な地域づくりにおいて、地域の工務店が重要な役割を果たすことができると解説した前編(4月10日号5面)に続き、後編では工務店による具体的な取り組み事例などを紹介する。
白井信雄 教授
1961年静岡県浜松市三ケ日町生まれ。大阪大学大学院工学研究科環境工学専攻。博士号(工学)。民間シンクタンク勤務、法政大学サステナビリティ研究所教授、山陽学園大学地域マネジメント学部教授を経て、2022年4月より現職。専門分野は環境政策、持続可能な地域づくり、気候変動・エネルギー政策、地域環境ビジネスなど。主な著書に「SDGsを活かす地域づくり」(晃洋書房)、「持続可能な社会のための環境論・環境政策論」(大学教育出版)、「再生可能エネルギーによる地域づくり」(環境新聞社)、「環境コミュニティ大作戦 資源とエネルギーを地域でまかなう」(学芸出版社)など。
求められるCSV
CSR(企業の社会的責任)に続き、最近ではそれをさらに進めた、社会の価値と企業の価値の創造を同時に実現していくCSV(社会的価値の共創)が求められている。社会に貢献しながら、本業も発展させていくCSVの形を提示できていないと、追い風が受けられないし、逆に向かい風を受けてしまう状況も生まれている。例えば、高品質で安い製品に顧客が満足していても、製造工程でCO2排出量の多い方法を続けていれば、社会的にマイナス評価を受ける。
地域に根差す企業にとってCSVは大きな意義を持つ。「地域」という単位で、生活者の暮らしを持続可能な形にしていくために、工務店、公共交通、中心商店街の3つが重要だと考えている。特に工務店は、家や暮らしに直結するカーボンゼロだけでなく、森林整備、雇用創出、コミュニティの豊かさ(つながりによる幸福度を向上させること)などの側面からも持続可能な地域づくりに貢献できる。
年間1万棟超を供給する大手ハウスメーカーでは、地域材を使って地元林業に貢献したり、地域の街並み形成に貢献するような家づくりはできない。工務店は、地域に密着する企業サイズ、事業のスピード感を備え、地域のさまざまなステークホルダーと顔の見える関係でつながることができ、工夫の余地がたくさんある。大手ハウスメーカーのまねをしていてはもったいない。
SDGsにふさわしい住宅市民と一緒に考える
1991年に創業し、年間80〜90棟の注文住宅・分譲住宅を提供する地域工務店のミナモト建築工房(岡山県岡山市)は、岡山・倉敷エリアの顧客に移住者や転勤族が多いため、家づくりとは別に「くらしのたね」というまちづくり部門をつくり、コミュニティ活動を展開している。現在は・・・・・
この記事は最新号『新建ハウジング4月20日号7面』に掲載しています。
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