古民家再生事業の収益化のポイント
NOTEではこうしたノウハウを生かし2015年、城下町一帯を宿として捉えて地域全体への回遊を促す「NIPPONIA」プロジェクトとして丹波篠山市内で「篠山城下町ホテルNIPPONIA」をオープンさせた。篠山城下町に点在する江戸から明治にかけて建てられた空き家4棟を改修し、資金のほとんど全額を地元銀行からの融資や民間資金の投資ファンドで賄った。
古民家再生事業の収益化のポイントについて、藤原さんは「古民家単体でなく、エリアで(面的に)計画しマネジメントする。計画をもとに地域ごとに地域の事業に特化したまちづくりのための新会社を設立し、別に施設を運営する事業者を誘致。前者が資金回収リスク、後者が施設の運営リスクを取る仕組み」としているが、現在では地域の歴史的資源活用というビジネスモデルに賛同する事業パートナー希望者が増えつつある。
改修工事も再生事業のノウハウ
「大切なのは、古民家の風合いを残すことであり、改修しすぎないこと。これで改修費用も調整できる」という。建物の改修において、同ホテルの施工に中心的に関わった岡田工務店代表の岡田常彦さんは「すすけた壁、少し剥がれ落ちた土壁の壁面は普通ならきれいに補修したくなるが、あえて手を加えないことによって“ここだけにしかない地域の味わい”が表現できることに気づいた」という。「古民家の改修はハードルが高いかもしれないが、挑戦してその面白さを知った。新築にはない気付きがあることを多くの建築事業者に知ってもらいたい」という。
篠山城下町ホテルNIPPONIA事業での収益化のポイントはこのほか、地域の魅力や文化価値を適切に評価した宿泊価格の設定にも表れている。ベッドやアメニティーにもこだわり、食事も有名シェフによる地の食材を生かした本格フレンチを準備。価格は1泊3万円以上に設定している。建物の改修費を抑えながら、地域本来の魅力を評価した価格設定とプロモーションで現実的な事業計画を立てるため、民間資金も集まりやすいという。
NOTEでは、現在全国には約149万棟あると言われる古民家の2割(30万棟)をNOTEの関わる事業として残すことを目指している。「そのためには全国の大工や左官をはじめとする地域の職人の力が不可欠だ」(藤原さん)という。自社の事業展開を地域の再生だけでなく、日本伝統の修復技術の継承にもつなげたい考えだ。
Pages: 1 2
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。