青森市のユネストホームは「LOCAL LIVING(ローカルリビング)」を自社のフィロソフィー(哲学)として掲げ、単なる家づくりではなく、「青森の暮らしを楽しむ」ことを顧客や地域の人たちに伝えている。社長の櫻田明寛さんは、価値観やライフスタイルが多様化する時代の中で、「暮らしに関わるクリエイティブな価値を発信できる人材がいる会社」が、これからの新しい工務店のあり方ではないか、と投げ掛ける。
櫻田さんは、「年々発展する都市的な機能の恩恵も享受しながら、豊かな自然が身近にある地方は、実は楽しい暮らしを実現できる大きなポテンシャルを秘めている。にもかかわらず、地方(青森)の人たちは自分たちが置かれている環境を少しネガティブにとらえ過ぎている傾向がある」と指摘し、「我々(工務店)が、厚い雪に囲まれる長い冬さえも家族が暮らしを楽しむ要素として取り入れるような豊かなライフスタイルを顕在化し、それを顧客だけでなく地域全体に発信しながら、
“もっと暮らしを楽しもうよ”という地域の人たちのモチベーションを引き出していきたい」と力を込める。
家具・インテリアショップで住空間をイメージ
同社が、「青森の暮らしを楽しむ」ことを具体的に発信する拠点が、いずれも青森市内にある家具・インテリアショップ「USTYLE(ユースタイル)」と薪ストーブ販売店「FIVES(ファイブス)」だ。USTYLEは、広大なスペースに北欧の家具やドイツ製のキッチン・食洗機などが生活(住宅)の空間をイメージできるような形で置かれており、カフェや打ち合わせスペースも備える。FIVESも同様で、単に薪ストーブを展示するだけでなく、アウトドア用品なども取りそろえながら、冬が長く雪が身近にある青森ならではの暮らしの楽しみ方を提案している。
櫻田さんは「モノ(家具や薪ストーブ)売りではお客様の暮らしを本質的に変えることは難しい。かといって工務店本来の仕事である家づくりや空間づくりは “伝え方” のハードルが高い」とする。その両方の課題を同時にクリアできる場が両店舗だ。「最近は、ミーレの食洗機を買いに来たお客様が本当はキッチン全体を、家具を買い替えたいお客様はリビングの空間を変えたいと望んでいて、お店でコミュニケーションするうちにリフォームに発展する事例が多い」(櫻田さん)とし、「狙い通り、モノ売りの場ではなく、暮らしや住まいをお客様と一緒に考え、実現する場所になっている」と話す。
プロデューサーが顧客の暮らしを “制作”
そのように顧客と一緒に考えながら、顧客にモノだけではない提案ができるのは、同社が工務店としての機能を備えていることに加え、コミュニケーションスキルの高い人材がそろっているからだ。櫻田さんは、品ぞろえより、人材育成を最重要視して店づくりを進めてきた。・・・・
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この記事は、『新建ハウジング別冊・プラスワン2020年4月号/令和流・高性能住宅』(2020年3月30日発行)P.76~79に掲載しています。
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