時間と共に変わっていくもの、変わらないもの
迎川:ルール4は、コミュニティについて。コミュニティというと、人が集まって暮らすとは一体どんな意味を持つのか。あるいは「田園都市」ってどういうことを考えながら作っていかなきゃいけないのか。田園都市に、なくてはいけないもの、あってはいけないもの。あるいは、時間と共に変わっていくもの、変わらないものとは何なのか? それから、今まさに問題となっているコロナとコミュニティの関係。この辺をお話いただければと思います。
野沢:難しいですけどね。日本の郊外の住宅地っていうのは第1種住居専用地域のような形で、住宅以外のものがつくりにくい環境でしたよね。それから初期の住宅地なんかも、どっかにショッピングセンターがあったりするんですけど、あと全体は緑地と住宅しかない。
要は均一な住宅じゃないところが住宅地だったわけですよね。それはやっぱり住宅地として不足なものが多すぎる。住宅以外のものがどこかにあるから、車でそっちまでいくとか。あるいは勤務先まで電車で1時間かかるとか。そういうことになったんだろうと思いますよね。だから住宅地、田園都市とか戦後のニュータウンとかうまくいかなかった1つの原因は、やっぱり食住が分離してる。場合によってはあまりにも分離している。だから日中がそこに人がいないっていう事がすごく起こるのかなと思う。
コミュニティが成立するためには、そこに居住者という当事者が、常に居ること。全員がいる必要はないけどね。その中で、住むこと、そしてコミュニティを工夫している。そんな場所として存在する必要があるんじゃないかな。これって何も難しいことを言っている訳ではなくて、当たり前のことなんですよね。その場が豊かで心地が良かったら、人は自然と居ようとするんだから。単一の、一色の場所じゃなくて、色彩豊かな場所になっているっていうのがすごく大事なんだろうなと思いますね。
引き起こされる分断、失った繋がり
野沢:いまのままだと、みんな極端にいくと分断されていくよ。分断というか繋がりを失ったまま孤独にいる。家族だけでいるみたいなことになって。それは多分社会を改良していかないだろうっていうふうに言っていいんじゃないかと思いますよね。住宅を作る工務店の人たちの仕事はすごく重要なんだけど、やっぱり住宅と住宅、あるいはその地域社会を繋ぐ住宅でないところっていうのをどう作るかっていうのが、そのコミュニティを作る、コミュニティに関わる重要な手がかりかなっていうふうに思いますね。
どうでしょうか。コロナは本当に嫌ですね。もう終わってほしいって、みんな思ってるでしょう。また増えるみたいなことも言ってるし。最悪な2年間だったし、下手すると最悪な3年目が待っているのかもしれないと思うと、今やれることはなんだろなあと。
人と人が、物理的な面で「繋がるな」って言われてるわけですからね。大学で授業を持っているんですが、リモートは、リモートの授業なりにうまくいったねなんて言ってたんですが、全部終わってみると、やっぱり対面できちんとやるってことっていうのと、成果、そこで獲得できるものの違いはもう明らかですね。伝わるものも、この方法(オンライン)で伝わるものもあるし、この方法だったら北海道の人も参加できるっていうのはあるけど、やっぱり限界はあるかもしれない。
迎川:「コロナの時代」を生きてみてですね、僕考えた事があって。僕たちの建築の仕事っていうのは、そのコミュニティの場を作る事なんじゃないかなと。
野沢:まさにそうだね。
迎川:オンラインでも打ち合わせして、なんでも講習会して、モノまで販売できて…みたいなことになってきてる。家から出なくてもいいと。人が集まると良からぬことをやるから。集まらない方がいいんだ、という嫌な社会になるのは嫌ですね。
野沢:コロナが早く終わってほしい。収束したら、みんなでリアルで楽しいことやりましょうね。この2年半分ぐらいもう吹っ切ってすごく面白いことやりたいですね。やっぱりリアルに顔を合わせてこうじゃないか、ああじゃないかってやらないと、ダメ。ダメっていうのは変だけど。成果が積み重ならないですね。それは皆さんもそう思ってらっしゃるんじゃないかと思いますよ。本当にこの歳になって嫌だけど、何歳であってもこの2年間は災難であったっていうか。災難でしかないと。その割に工務店は景気がいいんだっていう噂があって。驚いてますけどね。
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